ミックス

□優等生
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「今日は、伊角さん」
振り返ると、塔矢アキラがいた。
「ああ…久しぶり」
本当は先週、和谷言う所の『ダブルデート』をしたので、そう久しぶりでもないのだが。
「あのう、ちょっと」
「どうした?」
「伊角さんにお話したい事が」
「…?」
棋院の売店で立ち話という内容ではないらしい。
伊角は気を利かせて、アキラをコーヒーショップに誘った。
しかしそれが、伊角が死ぬほど後悔する結果になるとは誰が想像しただろう(作者はしている)。
ラテの載った盆を置くとアキラが会釈した。
「いいよ」
さりげなく砂糖も側にやると、素直に取って使う。
「突然すみません」
「気にするな。何かあったのか?」
「ちょっと。相談できる人がいなくて」
「…俺でいいのか?」
伊角が人選の可否を問う。はっきり言って、つい最近親しくなったばかりの間柄だ。
「伊角さんと和谷君は、お付き合いをしているんですよね」
突然アキラがズバリと言った。
「……」
否定する訳にもいかず、誤魔化しも効かないらしい。
しかし、白昼の喫茶店で持ち出して欲しい話題ではなかった。
「…それは…進藤から聞いたのか?」
しかし彼には、和谷もましてや伊角も明言した事はない。
「進藤のお二人への認識としては、恐らく『非常に仲がいい』程度でしょう?」
「……」
「でも僕には直ぐに分かりました」
「…どうしてそう言えるんだ」
「僕と伊角さんが話していると和谷君が睨むし。あ、『伊角さんは俺のだからな』とも言われました」
アイツ…!!という伊角の和谷への怒りと脱力も知らず、
「失礼ですが」
と、アキラが更に伊角に追い討ちをかける。
「お二人に性的関係はおありですか?」
「せ…ッ!!?」
伊角の声が、そう広くはない店内に響き渡る。
「…ないんですか?」
心無しか、アキラが肩を落とした。
伊角は周りに気を使い、気持ちを持ち直す為に咳払いをし、
「…それが、塔矢、相談とどう関係があるんだ」
思わず小声になる。
「進藤の事なんです」
「ああ…」
飛ぶ話に頭が痛くなりながらも、アキラとヒカルが成さぬ仲であるのを考え、もしかして、と思う。
「僕が、性的接触を図ろうとすると」
「ちょ、ちょっと待ったっ、」
「?」
遂に恐れていた話が出てきたのだった。
伊角とて年上である以上、よろず相談に乗る覚悟(?)はあった。
だが、この場と内容を鑑みるに、
「そ、そういう話は、俺には…」
と制止せずにはおれなかった。が。
「そうですか…」
と明らかに落胆するアキラを見て、放っておける伊角ではない。
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