カガツツ

□Making of Love
1ページ/13ページ

 一体これがどういう気持ちなのか、わからない。
 否、わかっているが、言葉にしたくない。
 優しくしてやりたい様な、苛めたい様な、乱暴な気持ち。
「加賀っ!」
 いつも通り、筒井が怒鳴ると安心する。
「……っんだよ」
 舌打ちをして、加賀は取り上げられた煙草を無理に追わない。
「もうっ、学校じゃ吸っちゃダメだって言ってるだろ!」
「前は学校以外もダメって言ってなかったかよ」
「っ、とにかくっ、没収!」
「されてたまっか」
 筒井の手がのびて、箱を取ろうとするのを加賀は易々とかわす。
「もうっ」
「モーモーってウシかてめえは」
「〜〜っ、邪魔するなら出てってよ!」
 囲碁部の活動を、加賀は快く思っていない。囲碁には個人的な恨みもあり、更には筒井の情熱がそんな所にしか向かない腹ただしさもあり。
 ……何だそりゃ。加賀は脱力する。筒井が何に熱中しようと何が好きだろうと、関係ねぇだろ俺には……。
 ただ、イライラするだけだ。すごく。
「邪魔なのかよ、俺様が」
「邪魔っ、だよ!」
「ほー、よく言うなこの口が」
 子供っぽい丸い頬を、加賀は両手でぐいと引っ張る。
「っ、やめひぇよかが!」
「おめー、筒井のくせに生意気だぜ最近」
「くひぇにって、なんらよっ」
 逃れられず、筒井の目頭に痛みから涙が湧いた。
「……くそ、バカ筒井」
 面白くない。簡単に泣かせる事もできるのに、乱暴に扱う事もいくらでもできるのに。
 目も合わせなかった出会った頃と反対の、今はまっすぐに来る筒井の瞳、それだけが、加賀の調子を狂わせるのだ。
「にゃに?」
 じっと見つめる加賀の指の力が抜けるのを、筒井は感じた。
「な、に……かが」
 そんなに見つめられたら、思い出してしまう。
 旅館で酔っ払った加賀に女の子と間違えられて――恥ずかしい事をされたあの時。筒井は一気に赤面した。
「……ナニ赤くなってんだ筒井」
「だ、だって、だって加賀がそんな目で見るからだろ!」
「っ、そんな目って、どんな目だってんだッ」
 筒井の正直な指摘に、今度は加賀まで真っ赤になる。
「どんな目って、」
「いちいち説明すんな!」
「だって加賀が聞いたんじゃない……」
 当惑した筒井の眉毛がハの字になって、加賀は勝負を投げた。
「あーくそ、もう帰るぜ俺は!」
「っ、どうぞご自由に!」
 可愛くない反応が返る。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ