アキヒカ

□クリーニングサービス
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何の悪気もなく、ヒカルは言った。
「家じゅう大掃除でさ、追い出されたんだもん」
「…うちも大掃除中なんだが」
アキラは内心の嬉しさを全くおくびにも出さず、
「どうして和谷の所でなくうちに来た?」
嫌味を言う。まだまだ腹に残るものがあるのだ。
「和谷と伊角さんとこも色々忙しいからダメって、…じゃなくて」
嫌味に気付かず正直に(アキラの前に和谷の所へ行ったのを)答えてから、ヒカルは口を押さえた。
「…えっと、お前なら相手してくれるかなって思って?」
なんとなく、最後が疑問形。首もかしげる。
いくらアキラでも、抵抗できる訳がなかった。
「…しょうがないな」
「やった! お邪魔しまっす!」
広い日本家屋では、年始の数多くの客に備えて、アキラの母と臨時雇いのお手伝いたちが立ち働いている。
「僕も自室を掃除中だから、しばらく邪魔しないでほしい」
「えー、十分キレイにしてんじゃん」
「気持ちの問題だ。ほら、ここで詰碁でもしていろ」
「ほぇーい」
とりあえず良い返事をしたヒカルは、しかしじきに飽きて、アキラが後ろを向いている間に、押入れをすっと開けてみた。アルバムを見つけ、興味津々で引き抜く。
「うわ、もう碁石握ってるよ赤ん坊のクセにっ」
「…何をしている」
すぐに犯行は露呈した。
「え、アルバム見てんの。お前の」
「誰が見て良いと言った!」
既に立派なアルバムの数冊が、畳に広げられている。
「だって、」
「邪魔をするなと言った筈だっ」
アキラはぷんぷん怒りながら、アルバムを積み上げて片付けようとして、
「…」
一枚の、親子の写真に目を止めた。
「お、塔矢のオヤジじゃん。まだ若いなー」
「…ああ」
「てかお前、こんなちっちゃい時からオカッパ頭なのかよ」
「幼い頃は、父に切って貰っていた」
「マジでー?! へえー、おっ、これおもしれーっ」
「っ! やめろっ、見るな!」
「リボン付けてるし! 女の子みてぇー!(笑)」
「それはっ、付けられたんだっ、芦原さんに!!」
「めっちゃふつーにカワイーじゃん」
「か、かわいい…?」
「うん、カワイイ!」
「……」
「あっ、これっ」
「進藤っ、やめろっ!」
結局はこんな調子で、大掃除は順調に遅れるのだった。
 

END
**************
アキラさん……新しい世界を見つけちゃったのでしょうか(え?)。

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