アキヒカ

□おねがい☆同級生
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間近に迫った体育祭のため、校内は慌ただしい空気に包まれていた。
応援合戦や数々の競技。特に組対抗リレーは最後の花形種目だ。
いつの間にかアンカーになっていた塔矢アキラは、義務的にその練習を終えてから囲碁部へ急ぐ。
「遅くなりました……」
しかし扉を開けると、何の事はなく、打っている者などいなかった。
代わりに目に飛び込んできたのは、
「あ、塔矢だ」
和気あいあいと笑っているアキラの想い人と数人の部員たちだ。
「な、どーだこれ」
くるりんっと回って、彼・進藤ヒカルはVサインをする。
「な、な、な……なんて格好をしてるんだキミは!!」
アキラは一瞬で血が頭に昇った。
「あかりのチアの衣装。やだって言ったんだけどさあ、」
ピンクのミニスカでまたくるりと回り、見せなくていいトランクスを見せてヒカルが言うと、
「だってぴったりじゃん進藤、ちょーウケるっ」
悪ノリの首謀者が隣で笑う。言わずと知れた和谷義高だ。
「もーヒカルってば……」
「でも似合ってるよねー進藤くん」
「まじ? やっぱし?」
「俺も着てみたいけど入んないんだよな〜」
勝手な事を言い放題の部員たちに、次期部長はキレた。
「キミ、たちはっ! 進藤っ、さっさとそのふざけた格好をやめろ!」
「なんだよ塔矢、オレ別に何も」
腕を捕まれ、ヒカルが不服を言う。
「まあまあまあ、抑えて抑えて塔矢」
「うるさい和谷! キサマが言うか!」
普段は礼儀正しい塔矢が、もはや呼び捨てだ。
「と、塔矢くん、私が衣装持ってきたのが悪かったの!」
「別にあかりは悪くないじゃん、塔矢なんてリレーの練習やって遅刻したんだぜ」
ヒカルが見当違いな方向で幼馴染みの少女をかばう。
「リレー?!」
和谷が突然叫んで、アキラに迫った。
「お前まさか、アンカーとか?!」
「だったら何だ」
不機嫌に和谷をちらっと見て、アキラが碁盤の前に座る。和谷は構わず、ヒカルを振り向いた。
「進藤っ、誕生日のお願いしろ!」
「へ?」
「20日の体育祭が誕生日って言ってただろ! 塔矢に頼め、その格好で!」
「……何の話だ……」
ヒカルの誕生日を初めて知った(しかも和谷から知らされた)衝撃をおくびにも出さず、アキラはイライラと詰碁を始める。いい加減に着替えろ、衆目にそんな可愛い姿を晒すんじゃない、進藤!
「あー、そゆことかあ」
「そうだっ、こんなチャンスぜってーねえぞ! 我が赤組の為に一つやってくれ!」
「何かあんまヤだけどなあ……しょがないか」
和谷とヒカルがツーカーで話をまとめたらしい。アキラはとてとてと傍に来たヒカルに目を止める。
「……何だ」
「あのさあ、俺の誕生日のプレゼントさあ」
頭をかきながら言うヒカルに、和谷が向こうから小声で激を飛ばす。
「進藤っ、手を握ってやれ!」
「もー」
言われた通り両手でアキラの手を取り、チアガールなヒカルは
「お願いだからリレー負けてくれよ……」
可愛い顔して信じられない言葉を吐いた。
「なっ、お前んとこの、白組強すぎなんだよ、ちょっとチカラ弱めで、お願い!」
「……進藤」
「なに?」
「勝負は正々堂々とやれーっ!」
青筋を立てて怒るアキラに、
「えーお願いってばっ!」
ヒカルが食い下がる。
「……やっぱダメか〜」
早々に諦め、和谷はため息で碁石を取った。
チアガールはアキラのお好みではなかったのか。
いやいや、体育祭兼誕生日の勝負は、最後までわからないのだった。



⇒End。。。

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