02/25の日記

08:31
毒ガス
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「大変です!博士!」
「なんだねキミ取り乱してみっともないぞ」
「毒ガスが漏れ出してしまいました」
「なんだって!?どうして?ちゃんと管理してたじゃないか!」
「いや、そうなんですが、想定外です」
「まずいぞこれは!毒ガスは風に乗って遠くまで飛ぶからな、あの遠い大都会にも飛んでいくだろう」
「どうしましょう博士!!」
「いや、…待てよ。毒ガスと言っても無色無味無臭だ。それに毒が効くのは10年後だからバレはしないだろう」
... 「そんなっ!つまり隠すんですか!?毒ガスが漏れたって知らせないんですか!」
「いやいや、それじゃ嘘が大きすぎる。ちょっとだけ漏れたけど、たいしたことありませんってことにすればいいだろう。」
「そんな…」
「それを信じずに逃げる人間もいるだろうし、信じ込んで逃げない人間もいるだろう。なんせ無色無味無臭で毒は10年後に効くんだからな」
「でも…10年後に毒が効いてきて責められたりしないですかね?」
「あはは、なに言ってるんだよキミ。この毒ガスが原因だなんて、どこに証拠があるというんだ?常日頃の食生活や不摂生が悪いってことにすればいいじゃないか。実際、もしかしたらそれが原因かもしれないじゃないか」「つまり、博士も毒ガスの効果と不摂生の結果の違いがわからないってことですか?」
「まあ、そんなところだ」
「そんな…ひどい!今までの研究はなんだったんですか!?」
「それはキミ、好奇心だよ。人類がどれだけの効力のある毒ガスを作れるか試してみたいじゃないか。使い方によっちゃあ良い面もあるしな」
「でも…その毒ガスの使い方のせいで、その町に住む人々は意見が分かれていつも喧嘩しているんですよ?」
「それは仕方ないさ。便利や金を取るか、安全を取るか人それぞれ考え方は違うからな」
「でも、もう、こんな毒ガスの研究はやめてしまいましょうよ!きっとこれはやめるべきサインなんです!」
「いやぁ〜それがな、やめ方が実はわしにもよく分からないんだよ」
「なぜですか!?ご自分がお作りになったんでしょ?!」
「まあな。でもな、実際にわしも直接見たことも触ったこともないんだよ。なんせ無色無味無臭の毒ガスだからな」
「そんな…」
「でもキミ、こんなにいい給料もらっていて、本気でやめようと思ってるのか?もう贅沢も出来なくなってもいいのか?」
「……たしかにそうですね」
「そうだろ?わしらは知らんふりすればいいんだよ」
「…無色無味無臭ですもんね」
「そうだ。そうだよ。さすがキミは物分かりがいいな」

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