02/15の日記

18:58
ある星のはなし
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 ある星のあるところに、とてもお金がない国がありました。
 そのかわりに、その国にはみんなが欲しがる宝物がたくさんありました。
何度もほかの国の人がやってきて、その宝物とお金を交換してほしいとたのみましたが、断わりつづけていました。
なぜなら、その国の人たちにとってその宝物は、お金よりも大切だったからです。だから、お金にかえずに宝物のまま、みんなで大切に守り、しあわせにくらしていました。
 そんなある日、ほかの国の王様が言いました。
「あの国はずるい。宝物をひとりじめしているじゃないか。きっとあの国の王様はケチでイジワルでわるい人間にちがいない。」
すると、そのほかの国の王様も言いはじめました。
「そうだそうだ!あの国の王様はひどいやつだ!わたしたちが神に代わってこらしめてやろう!」
 たくさんの国が力を合わせて、宝物があるその国を戦ってやっつけることにしました。
 たくさんの国にはたくさんのお金がありました。
なので、たくさんのお金をつかって、とても強くて大きな爆弾をたくさんつくることができました。
 たくさんのお金をつかって、たくさんの兵隊をあつめることもできました。
 けれども、兵隊とその家族はみんなで怖がります。
「けがしたり、死ぬのはいやだ!たくさんお金をもらってもいやだ!命はお金より大切だから!」
王様は考えました。そして、いい方法を思いついたのです。
 それは、たくさんのお金をつかって、最新兵器を作ることでした。
 その兵器は、爆弾を乗せたロボットを空へ飛ばし、安全なところからスイッチを押すと、宝物がある国に自動に空から爆弾を落とせるというものでした。
そのロボットにカメラが付いていて、遠くからでも宝物がある国のようすがわかるのでした。
 その最新兵器は、王様が兵器のお祭りで買ってきたものです。
 兵器のお祭りとは、兵器を作っているお金持ちが、それぞれが作った最新兵器を展示して派手にPRするお祭りのことです。最新の車を展示するお祭りと変わりはありません。
 兵隊たちとその家族はよろこびました。
「これでけがしたり、死なずにすむ!」

 こうしてたくさんの国は、安全な建物の中でスイッチを押して、宝物がある国に次々と爆弾を落としていきました。なにしろスイッチを押すだけなので、誰でもかんたんに爆弾を落とせます。
 おしゃべりをしながら、ゲームを楽しむようにできるのです。
「こんなに安全に簡単にできて、お金がもらえるなんてうれしいね!」
兵隊たちはみんなよろこびました。

 そのころ、宝物がある国では、大変なことが起きていました。
 次々と空から爆弾が落ちてきて、次々とたくさんの人々がけがしたり死んでいきました。
宝物を守ろうとしていた兵隊をはじめ、たくさんのお母さんお父さん、たくさんのこども、たくさんのあかちゃん、たくさんのおじいさんおばあさん、住んでいた家や畑、学校・・・たくさんの人のたくさんの大切な人やものが次々と血を流し苦しみ、死に、壊れていきました。
 人々は悲しみ怒ります。
 でも、どこに怒りをぶつけたらいいかわかりません。
 やり返そうと戦うこともできません。やめてくれとたのむこともできません。
 なぜなら、爆弾は空高くから落ちてきているからです。
 やり返そうとしても、お金がないので大きな爆弾なんてつくることができません。ましてや最新兵器などつくれるはずがありません。
 とうとう爆弾は、宝物まで壊してしまいました。
けれども、爆弾は落ちつづけます。
 宝物を大切にしていた国は宝物もなくなり、たくさんの人が死に、あとには行き場のない悲しみと怒りだけがのこりました。

 そのころ、遠い国の安全な建物の中で、兵隊はスイッチを押すのをやめました。







「さあ、5時だ。今日の勤務は終わりだ〜!帰って家族とテレビみてくつろぐとするか〜」
 背伸びをして、すがすがしい顔でゆったりと歩き去っていきました。

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