02/11の日記

19:04
ゲームオーバー
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 ケース@ 20代女性 
わたしには付き合って5カ月の彼氏がいる。
近頃、彼の行動が冷たい。メールしても返事がすぐ返ってこない。
仕事中だったって言ってるけど、前はすぐメール返してくれてたのに。
わたしも彼も、紹介型サイトのキクシィやってる。コメブロもやってる。
メールの返事がずっとない時、キクシィ開いたら、彼は5分前に開いてた。
ありえない。わたしのメールの返事しないくせに、なんでキクシィは開いてるわけ?ムカつくからあしあと残してやった。
 しかも、コメブロ開いたら、コメピグしてた。部屋に行ったら知らない女のピグがいて、遊ぶ約束してるっぽかった。彼のキク友見たら、同じ名前の女がいた。
 もう許せない。ほんとムカついたから、キクシィでところ構わず同い年くらいの男を検索していっぱいマイキク申請してやった。今度リアルで何人かと会う約束した。キク友がまた増えた。あの女より5人も多い。もっと増やしてわたしが人気者だって思い知らせてやろう。



ケースA 40代男性 
俺は最近、ビルを建てた。シルバーの20階建ての近代的なビルだ。
傍には3階建ての大きな家も建てて、そこで美人な奥さんと二人のかわいい子供たちと暮らしている。俺はこの町の町長だ。学校やデパート、発電所、鉄道や高速道路なんかも建ててきた。市民の中から犯罪者が出たら、ただちに警官が出動して解決する。だから、町はいつも穏やかで平和だ。
最近遊園地を作ろうかと考えている。
しかし、そのためには他の人の力がいる。
それは、まだ町を持ってない人に、町を作らないかと誘いこむことだ。
それによって、俺の町に遊園地が出来るんだ。
誰を誘うかはもう決まってる。友人のあいつだ。
あいつ、俺と仲が良いくせに、町を作らないかって散々誘ってもまるで無視なんだ。町を作ることに興味がないとか言ってる。
馬鹿だよ、こんなに気軽で楽しくて達成感があることなんて他にはないのにな。
パソコン開けばすぐだ。
俺の町はパソコンの中にある。
平気だよ、毎日会社で上司や同僚や部下に馬鹿にされたって。
だって俺は町の町長。
平気だよ、彼女いない歴40年以上でも。
だって俺には美人な奥さんと二人のかわいい子どもたちがいる。
早くあいつ誘いに乗らないかなあ。
あいつ、ビル建てたって言ってたけど、こっちの世界じゃまだゼロだもんな。
俺のほうがすごいんだぜ。



 ケースB 10代 男子
 ぼくの夢はサッカー選手になることでした。
だから、毎日放課後に部活でサッカーの練習をしていました。
でも、お父さんはサッカー選手なんかになるなと言います。
理由はお金がかかるし、苦労するからだそうです。
  ある日、お父さんが僕に通天堂PSを買ってきてくれました。
でも、ぼくはうれしくありませんでした。なぜなら、ゲームが好きではないからです。
すると、お父さんはサッカーのソフトを買ってくれました。
サッカーのゲームはとても面白くて、いろんな有名選手を設定してやりつづけました。ゲームの中ではかっこよくシュートが決まって、その時とてもスカッとします。
でも、最近頭が痛いです。目も疲れてきて、身体の調子がよくありません。ゲームのせいかもしれないと思うけど、楽しいのでどうしても毎日やってしまいます。それに、お父さんはゲームのせいじゃないと言うので、大丈夫だと思います。
最近、サッカーをするのがつらくなってきました。
少し走っただけで疲れるからです。
だから僕は、いまサッカー選手になる夢をやめようか考えています。
頑張ってもなれないかもしれないし、というか多分なれないので、ぼくは普通に就職してサラリーマンになることにしました。
 お父さんが勤めてる会社はゲームを作ってる会社です。
ぼくは、あんな楽しいゲームを作れる会社で働きたいなと思います。



 ケースC 60代 男性
 わしらの計画どおりだ。うまくいった。
はじめこの企画が出た時、バカバカしいと思ったが、驚くほど効果があるものだな。
 この国の人間は世界一洗脳しやすいというのは本当だったな。
なんの疑いもなく最先端技術に飛びつく。それが有害な電波を発し、人体や思考に影響しているなんて考えもしないだろう。
当然か、毒素は長い年月をかけて効いてくるものだからな。
毎日塩分や添加物を濃くしていき、旦那を殺す主婦のやり方と同じだ。
苦しまずに、いつの間にか何も考えられない頭になっていくんだ。
この国の人間には世界の問題解決など出来なくなる。
それどころじゃないからだ。それより恋人のメールの返信や、架空の町を作り上げること、ゲームの快感のほうに興味があるからな。それと生活のことが絡んでくるとそれでもうキャパシティオーバー、ゲームオーバー。
本当はそれ以外のことも思考できる幅広い脳を持っているんだが、そこがわしらの腕の見せ所だ。
中毒性のある電波を出すこの技術は見えない麻薬とも言おうか。この電波のおかげで、接すればするほど脳の思考範囲がどんどん狭くなるようになっている。
身体の変化に気づいて使用をやめる人間もいるが、たいていはきづかない。気付いたやつが警告したって、単なる変わり者扱いされるだけさ。
なぜかって?この国は多数の意見が正しいとされているからだ。
もはや正しいこと言っても少数なら相手にされない。
だから、余裕で野放しにできる。
勇敢な音楽家、芸術家、作家、ジャーナリストよ。気の毒だが、きみたちの意見は正しいが相手にされない。気休め程度だ。
なぜなら、受け取る側の脳がもうすでに麻痺しかけているからだ。
なにか深く考えようとすると頭痛がする仕組みになっている。心が鬱になる仕組みになっている。
鈍感で、何も考えずに生きることが一番楽だ。
こうして、考えない人間を育成することは困難かと思ったが、予想以上に容易だった。
次は何を世に出そうか。何を売り出して金を儲けようか。
売り出すなんて簡単だ。考える力のない人間を相手にするのだから。
テレビやネットに頻繁に出せばいい。それだけだ。
人気タレントに一言「わたしも持ってます」と言わせよう。
実に簡単だ。商品の良し悪し、新しい古いなんて奴らにはわからない。
悪くても良い、古くても新しいと言って出せばいい。
なんて簡単なんだ。簡単すぎて頭も痛くならない。



 ケースD 30代 女性
 わたしは長い間勤めてた会社をやめて、世界中を旅している。語学はほとんど自信ないけど、言葉が通じなくても伝えようと必死でジェスチャーしたりしたら、案外伝わるものね。
旅先で知り合う人によく聞かれるの。あなたの生まれ育った国はどんな国ですか?って。そんな時わたしは堂々と答えるの。
「とっても素敵な国ですよ」って。
わたしね、本当は生まれ育ったあの国が嫌いで嫌いで仕方なかったの。
だって、すごく意思が弱いじゃない。小さいころから多数決でいろんなことが決まって、わたしはいつも少数派だったから、自分が間違ってるんじゃないかって悩んだこともあった。年頃になったら結婚しろってうるさいし、就職先決めるみたいに条件出して結婚相手決めたりして。
 大国の真似して個人主義を主張し始めたら、今度は犯罪や自分勝手な人間が増えたりして・・・。
でもね、あの国はそんなに悪いところだけじゃないのよ。
世界中を旅して、世界の中にあるあの国を見ることが出来たの。
ちょうど高い場所から住んでる町を見下ろすように、あの国を見ることが大事だと気付いたの。
意思が弱いって言ったけど、良く言えばとても適応力が強いってこと。
多数決で決まって行動に移せるってことは、団結力が強いってこと。
ただ、いけないのはそのために自信がなくなってしまったことだと思うの。
 あの国はもっともっと自信を持っていいと思うの。
だって、弱虫って言われたって戦争をしないって言いきれてるのよ。
愛国心とか、正義とかのために戦争するなんてナンセンスだって、過去の悲劇や失敗で学べる環境にあるの。
 わたしはあの国に生まれ育ったことを、世界中の人に自慢して旅してるの。
いっぱい失敗した国だから、学んだこともたくさんあるの。
 でもね、最近うわさで、悪いやつが見えない技術であの国の住人を支配しようとしてるらしいの。
 悪いやつは悪知恵が働くからね。本当に恐ろしいわ。
だから、わたしはそろそろあの国に帰ってみんなに忠告しようと思ってるの。
 あの国の良さと悪さを一番よく知ってるのは実はその悪いやつらなの。
あとはわたしたちが同じようにそれを知って、短所を長所にしていくこと。
長所を短所にされてはダメ。短所を長所にしなきゃ。
適応力や団結力を強みにするの。育んできた知恵を使ってね。
 わたしの力なんて、ほんとにちっさなものかもしれないけど、わたしは負けないわ。
だって、あの国を愛してるんだもん。
でも、わたしの力だけじゃ足りない。



だから、どうかお願い。あなたの力を貸して。

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