黄泉路
□蛟龍の巫女
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小さい頃に聞いたお話。
お祖母さんに聞いたお話。
それは、巫女と蛟龍(ミズチ)の…
とても可哀想なお話…
‐蛟龍の巫女‐
『ねぇねぇおばあちゃん、このほこらにはなんのカミサマがまつられているの?』
5歳くらいであろうか、栗色の髪に、大きな瞳。赤いおべべを着た可愛らしい少女が、小さな祠に向かい、静かに手を合わせる老婆の着物の裾を引っ張り問掛けた。
『この祠かい?此処にはね…水神様とその守護神様が奉られているんだよ…』
ゆっくりと手を下ろすと老婆は祠から少女へと目線を移すと、にっこりと微笑んで答えてくれた。
『すいじんさまとしゅごしんさま…?』
『あぁそうだよ。昔はね、このおーっきな池のあった辺りにも都があったんだよ』
『え!?ココに!?でもでも、どうしてみやこはなくなっちゃったの!?どうしてすいじんさまとしゅごしんさまはココにまつられているの!?』
老婆の言葉に目を真ん丸にして、興味深々に聞き返すと、老婆はにこりと微笑んで、祠のそばの木陰へと腰を下ろした。少女も続いて老婆の隣にちょこんと座った。
『それじゃあ…お話してあげようか…昔々…』
遠い昔、大きくとても栄えた都があった。都には多くの人がいて、毎日がまるで祭り事のように賑やかであった。
その都から少し離れた山蔭に、小さな小さな村があった。村は小さいながらも、村の奥から流れる清水で豊かな生活を送っていた。