戦国時代
□戦いのない日
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「う・・ん」
開いていた手が握りこぶしになって、信繁が起き上がった。
「あれ?のぶとも?」
「顔色悪いぞ。疲れてるんじゃないのか?」
ふあぁ〜とあくびする信繁の顔を覗き込む。
「うーん?別に。ただ眠いだけ」
ごしごしと目をこする。
「眠いだけって、ガキじゃねえんだおかしいぞ。ほら、じっとしてみろ」
と、額に手を当ててみた。
「熱はないみたいだけど・・。無理すんな、ねてろねてろ」
肩を押し、再び寝かせる。
「ちょ・・、別になんともないって」
秋山の手を振り払って上半身を起こした。
「−板垣殿と、甘利殿が亡くなって、今、お屋形様を支えているのはお前だろ?戦がない時ぐらい休んでろい」
先の上原の戦いで二人の職を亡くした。
「もう少し、お屋形様を気遣う気持ちの何分の一でもいいから、自分をいたわれよ」
「別に己を粗末にしているつもりはないけど?」
さらりと答えられる。
「俺は第三者の立場として言ってんだ。お前は自分よりお屋形様を優先するから心配なんだい!」
(大事にしてほしいんだよ)
信繁の片恋は決して実らないもの。
「別に私はいいんだ。それより、お前こそ心配しすぎだゾ」
「これは俺の性分なんだよ」
「あーそう。−お前の顔もそういうところも好きだぞぉ」
わざとらしく抱きついて。
「知ってるよ」
秋山はポツリと呟く。
だって、自分は、信繁の大好きなお屋形様に似ているから。
「あ?なんか言ったか?」
「いや・・」
(お前だって、こんなにお屋形様にそっくり似せて・・)
子供の頃はそんなに似ているわけではなかったが、あの時から、髪型、仕草までお屋形様に似せてきた。
影武者として死ぬために−
−−−−−
うちの信繁は、晴信とそんなに似てません。兄弟だから似てるといえば似てますけど。信廉のほうがそっくりです。