豊臣家の一族

□日和
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「−菊丸、菊丸」
小吉の部屋に近づくと、彼の怒鳴り声が聞こえてきた。

何事かと思って部屋を覗くと、小吉が子猫追い掛け回していた。

「あ、秀勝殿、そこ、閉めて、閉めてー!」
「え?」
何を言われているか理解できず、ぼんやりとしてると、猫はすばやく足の間を通り抜け、外へ行ってしまった。

「秀勝どの〜」
恨みがましくみる。
「ええと、何があったのかな?」
引きつった笑みを浮かべた。

「菊丸のやつ、叱っても部屋の中でおしっこしちゃうんだ。懲らしめてやらなくちゃ」

「菊丸?」

「猫の名前。あーあ、もう、当分戻ってこないや。−で、何の用?」
めんどくさそうに問いかける。
「小吉殿に会いに来たんだ」
「///」
小吉は頬を染める。
「おや、脈ありかな?」
「知らない!」
覗きこんでくる秀勝から視線を逸らす。

「けれど、よかった」
「え?」
「思いのほか、あの子猫を可愛がってるようだから、やきもちやくところだった」
腰に手を回し引き寄せる。

「お主が押し付けたくせに何言ってんだよ」
顎を持ち上げ、顔を近づけた。

「わーわー///」
小吉は、口付けられるとわかり、顔を背け、手で押しのけた。
「つれないなぁ」
秀勝は、がくりと肩を落とす。力が抜けた隙に小吉は逃げた。
「私の気持ち知ってるだろう?」
「俺の気持ちも言ったはずだ!」
「好きだと言ってくれたろう」
「違う!−もう///わかってるんだろ!?いい加減にしろ!」
力いっぱい突き飛ばし、外へでる。
一瞬だけ見えた傷ついた顔。胸が痛む。
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