真田家
□寒い夜は
1ページ/1ページ
雪が積もり、風が冷たい夜のことだった。
「兄上、一緒に寝てもいいですか?」
「昌輝…。なんだ、眠れないのか?」
障子越しに最愛の弟から声をかけられ、信綱はそっと開けた。
「寒くて、目が覚めてしまいました。迷惑なら帰ります」
手をすり合わせ、体を震わせていた。吐く息が白い。
「いいよ。おいで」
やんわりと言って、中へ入れた。
「二人で寝た方が温かいものな」
信綱は先に褥に入り、夜具をあげて、昌輝を招き入れた。
「源五郎はこんな寒い夜はどんな風に過ごしてるんだろう?泣いてなきゃいいけどな」
府中のお屋形様のもとへ出仕している弟を想う。
「はい。―そういえば、秋生まれの子供が多いのは、寒い夜、こうやって寄り添って寝るからだと申してました」
信綱の胸に頭を疼くめ、さらに体を寄せて言う。
「誰が?」
「父上です」
「あ、そう…」
(あの、エロ親父が!!)
心の中で叫んだ。
「兄上は温かくてよく眠れそうです」
ぎゅっと抱きつかれ、ドキッと心臓が高鳴った。
(なんだかなぁ…)
密着する熱に意識が行ってしまう。
「昌輝…」
熟睡したのを確認して、唇に唇を重ねた。
甘やかなそれの感触に体が火照る。
「ん…、あに…」
「……」
起きたのかと思ってドキっとした。
しかし、規則正しい寝息が聞こえ、ホッとした。
終