戦国時代2

□夢見るのは…
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 晴信は家臣達を集め、諏訪の姫を側室に迎えると言い出した。皆がざわめき、反対の意を唱える中で山本勘助が賛成した。
 勘助は、お屋形様と諏訪頼重の姫との間に男児ができれば、諏訪家を継ぎ、頼重の元家臣達もお屋形様に懐くだろうと説いたのだった。
 信虎時代からとくと手を焼いてきた信濃勢であるため、反対していた家臣達も渋々賛成していった。


 話し合いが終了し、大広間を出て行く晴信の後ろをいつも一緒について行く信繁がこの時は複雑な表情で見送っていた。


「―諏訪家の元家臣に姫を側室にとすがられたそうだ」
「出羽守殿…」
 そっと耳打ちされそちらを向く。


「お屋形様をそんな切なげに見てはならぬ。苦しむだけだ」
 小山田出羽守信有の忠告に目を見開いた。

「そんな風に見えましたか?」
 信繁は苦笑した。

「無自覚か?―皆が出て行く、私達も…」
 言いかけてやめ、顎を掴まれ唇を奪われた。
 細めた目の端に家臣達の出て行く後姿が映る。
 頼むから振り返らないでくれと祈りながら信有の口付けが止むのを静かに待つ。




「―だ、誰かに見られたらどうなさるおつもりですか?」
 誰もいなくなると、信繁はトンと、信有の胸を押し放す。

「見られなかったろう?」
 信有は余裕の笑みを浮かべる。

「お主が悪い。辛いのに無理に微笑おうとするから。私でなくとも誘惑されてしまう」
 そして、信有は信繁の肩をそっと掴んだ。
「泣きたいなら泣けばよかろう?」
 真っ直ぐ見下ろすと目と目が合う。綺麗な瞳だ。

「私が泣き言を言う場所は決まってます故」
 ふと、眼を細める。

「秋山の小倅か?年を追うごとにお屋形様に似てくる」
「別に似てるからじゃないですよ」
 そう言ってやはり微笑うのだ。


「―お主に浅黄色は似合わぬ。お屋形様と似せようとするな」
 浅黄色の狩衣の衿紐を解く。今日お屋形様が着ていたものと似た色の。

 信有ははだけた肩口に顔をうずくめ、口付けた。

「ぁ……」
 カリッと小気味よい音がしてそこを吸われる。

「あれとは寝てないのだろう?」
 『あれ』とは、秋山のことだ。
「寝る理由がありませぬ」

 眼を伏せる信繁を組み敷き、袴を脱がせた。
 うつ伏せにさせると長襦袢の裾から手を差し入れ、臀部を撫でた。
 ピクッと跳ねるのに信有は微笑った。


「ここに何人くわえ込んだ?」
 菊座に指を押し入れれば、キュッと、そこが締まる。

「さぁ?もう数えるのを止めました故」
 中をかき乱すと体重を支える両の手が震えた。

「ん…」
 下唇を噛み締め、嬌声をあげるのを耐えているようだ。

 抜き差しを繰り返すうちそこが緩む。背中が弓なりにそりあがった。
 膝立ちにさせ、高ぶりを菊座に押し当てた。



「ヒッ……、あ…、あぁぁ…」

 貫くと叫びそうになるのに慌てて信繁は口を手で覆った。
 はじめは痛むのだろうが、後は、苦痛の表情が緩み、女のようにそれを受け入れていく。むしろよくなじんだそこは締りがよく具合がよい。信有は興奮し、腰を動かした。

 きつく結んだ口の中に鉄の味が広がり唇の端から血が垂れた。


「ん…っ…」

 瞬時、一度引き抜いた信有が再び億へ楔を打ちつけてきた。奥歯を噛み締め、眼を硬く閉じる。汗でべたつく腕が床で擦れ、熱く感じられた。腰も震え、信有の支えがなければ崩れ落ちてしまうだろう。


「あ、くっ……」


 抱かれながら理由を考えてしまう。自分が寂しいから誘惑したわけではないと。『お屋形様のため』という言葉だけがこの虚無を埋めていく。



「―出羽守殿…、抱いてください」
 縋るように見れば後ろから筋張った手で抱きしめてくる。
 後ろめたさはない。



「お主がお屋形様に恋焦がれてることぐらいお屋形様とて気づいてるだろうにな」
 正面を向かせ髪を掬う。

「私が勝手に想ってるだけです」
「本気で好きなら見返りが欲しくなるはず。そんな穏やかではいられまい」
 優しく頬を撫でると、うっとりしたように目を閉じ、その手に自分の手を重ねた。

「死ねます。お屋形様のためなら生きることを手放せます。それが唯一私が狂わずにいられる箍です」
 真っ直ぐ見据える瞳は強い光を放っていた。


「なら、この世に留めているのもお屋形様ゆえか。―奥方を持ちなさい。それがお屋形様のためでもある。なんなら私がいい娘を用意しようか?」
「結婚はします」
 しかし、それ以上の口出しはさせないといった感じだ。

 信有は苦笑を浮かべた―。









*****

信有様をこんな風にしてしまって申し訳ありません。信繁様の破瓜に真っ先に気づいてそうですね。


















 

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