豊臣家の一族
□祈り
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その日、亀山へ向かう秀勝の姿は、凛々しく感じられた。
「秀勝殿、お元気で。−ほら、菊丸、お前も挨拶しろよ」
《ミャー》
秀勝が、顎を撫でると、ごろごろと喉を鳴らした。
「可愛いなぁ、菊丸も連れて行きたいよ」
「´も`って、なんだよ。言っとくけどな、連れて行くなら菊丸だけにしろよ」
「へぇ、菊丸ならつれていってもいいのかい?」
そう、意地の悪い笑みを浮かべる。
「−やっぱり駄目。秀勝殿、なんだかやらしい」
頬を染めて俯く。
「そう?」
「−お主もじきに城主となるのだな。瀬田に行くとき、見送りできたらいいが」 ひと呼吸おいて秀勝は、寂しそうな表情をする。
「そんな、別に今生の別れじゃないんだから…」
心臓がせわしなくなる。
「そうだね。−じゃあ、義父上、そろそろ出立致します」
「あぁ、達者でな。大丈夫、そなたならきっと亀山を治められよう」
「はい。精進致します」
そういって、馬に跨った。
「あ、そうだ。小吉殿、餞別が欲しいな」
「え?」
ぼんやりとしていた隙に頬に唇のかさついた感触。
「ひ、秀勝殿ー!!」
ぶんっと、拳を振るが、すぐに離れた秀勝には当たらず、空をきる。
「あはは、小吉殿は、可愛いなぁ」
「もお///」
頬を膨らませて、そっぽをむいた。