豊臣家の一族
□日和
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ぽかぽか陽気のある日、にゅっと、目の前に白いものを押し付けられた。
「秀勝殿〜」
「残念、猫語を聞けると思ったのに」
そう言って、手に握った子猫を引っ込めた。
「いい加減やめろよ」
先日、猫に向かって にゃと話しかけていたのを秀勝に見られてしまったのだ。
それからというもの猫語で話せとしつこく言われ続けている。
「こいつ、目の色が左右で違うんだ。異国の猫らしい。お前にあげる」
「いらない」
即答する。
「そういわずに」
無理やり押し付けられ、子猫が苦しそうに鳴いた。
「じゃあ、もらうけど、猫語は、しゃべらないぞ」
掌ぐらいの大きさの子猫をうけとる。体は白いが、足の先だけ茶色みがかっており、目の色が、秀勝の言うとおり、左右で違っていた。右が青で、左が金色だった。
「本当は、お前の喜ぶ顔が見たかっただけなんだけどな。気に入らなかった?」
そう寂しそうにいうのに、ズキッと胸がいたんだ。
「子猫は可愛いと思うよ。ありがとう」
小吉は微笑んで見せた。