豊臣家の一族

□とまり木
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−天正八年ー

庭の松の木の枝に黒い物体が、丸くなっていた。それを小吉は、小首をかしげて見上げていた。

「にょ?可愛いにゃ。お前のご主人様は、誰にゃ?」
平和そうに眠っていた猫は、耳をピクピクさせる。
小吉は、捕まえようと手を伸ばすがー。

「にょ?うぎゃー!」
すばやい動きで顔に飛びついてき、おもいっきり引っかかれた。

「何するにゃー」
本気で怒るわけではないが、猫に向けて叱り付ける。

「クスクス…」
「///」
小吉は、笑い声がした方を向く。
「秀勝殿ー!いつから…?」
縁側に座っている女のような優しげな顔立ちの男にすぐ気づく。
「その猫が、木に止まる前からだよ」
悪ぶれなく足の裏を舐めている猫を指差す。
(それって、はじめから?)
かあーと顔が赤くなる。

「それなら、一言声をかけてくれればよかったのに」
と、小声で呟いた。

「ふむ、小吉殿があまりにも可愛かったから、つい、見とれていたんだ」
冗談のように、軽い感じで言う。

「お、男に向かって、可愛いは、ないだろ?」

「まあま、こっちきて座りなよ」
手招きされ、小吉は、秀勝の横にすわった。

織田信長の四男の秀勝と、羽柴秀吉の甥、小きちは、共に秀吉の養子である。
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