豊臣家の一族

□信頼
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仙千代殿を見送った時、若は、微笑っていたが、その目はひどく淋しげだった−。



1585年−

「なぁ、勝千代も一緒に食べぬか?」
朝餉の給仕をしているとふいに声をかけられた。

「私は、別室で食べましたから」
「−つまらぬ」
ボソリと呟く。
「若?」
様子がおかしい。



「秀康様!まだ朝ご飯を召し上がっておいでだったんですか!?ほら、さっさとして下さい!」
「わかっておる源四郎」
いきなり入ってきた源四郎にせかされて、先ほどから箸で弄んでいたおかずを口にはこんだ。

(すごいな、源四郎殿は。私には若を叱ることなんてできない)
若の生まれる前からの境遇をしっている勝千代は、叱るどころか、とるにたりない若のわがままを許してしまう。

勝千代がそんなことを考えているうちに、朝飯を食べ終え、源四郎に支度を整えられる。

「全く、源四郎は手厳しいな」
「仙千代と勝千代が甘すぎなんです。私は伯父上に秀康様のこと任されているんですから伯父上にかわって厳しくいたします」
「ぐっ…。−勝千代〜」
助けてくると言わんばかりに縋るように見つめてくる。
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