豊臣家の一族

□神隠し
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−1584年

大阪城下を羽柴秀康と石川勝千代が歩いていた。
街は、旅芸人や、商人、町人で賑わっていた。


「勝千代、腹は空かぬか?そこの茶屋で何か食べようぞ」
赤いしょうぎが並んでいることを指差す。
「でも、源四郎殿に怒られませんか?」
「勝千代は気が弱いな。お主は、主人が誰かわかっておらぬのか?」
「それはわかっておりますが…。若は、源四郎殿のこと、恐ろしくはないのですか?それに、お忍びで、城下にでたことが、もし、知られたら…」
「源四郎の口うるさいのは、じい譲りだな。仙千代の方がよかった」
「仙千代殿は、元服なさって、成重となったんでしたね」
「そうだったな」
懐かしむように目を細める。

「さあて、後はどこへ行こうかな」
「若、もしかしなくても、あそこへ行く気はないでしょうね」
怖ず怖ずときく。
「神隠しのことですよ!」

「あぁ、あれね。面白そうだろう?」
ニヤッと笑った。
「源四郎殿に叱られても知りませんよ」
勝千代は、諦めて溜息をついた。
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