豊臣家の一族

□源四郎
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誰もいない屋敷がひどく静かだった。

『父上…』
七歳の源四郎は、心細そうに父を呼んだが、それに答える声はない。
父は、家康の嫡男ー信康切腹の責を負って主の前から消えた。

−子も家人も全て捨てて。




父が出奔したあと、源四郎は伯父の本多作左の養子となり、家康の小姓として浜松城に出仕した。


 源四郎は、実の父に快く思われていないお義伊の事が気になっていた。
幾度か顔を合わせている。

中でも印象に残っているのは、大阪城へ人質として出発した時。
きつく結んだ唇、意思の強そうな瞳、背筋を伸ばし堂々とした立ち姿。
体格は同年の子より立派であった。

源四郎は一目で惹かれた。

お義伊に同行したのは、源四郎の従兄弟の仙千代と、石川勝千代だ。
両名とも彼とそんなにかわらない年の少年だった。
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