忍たま乱太郎
□苦い…
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「伊作、頼む…」
肩をおさえた潮江文次郎が医務室に入ってくるなり、床に胡坐をかいた。
「テメェ、それが手当てを頼む態度か!?」
食満留三郎が食って掛かる。
「別にお前に頼んでるわけじゃねぇ!」
文次郎は態度を改める気はない。
「伊作にだったらいいって言うのか!?」
「留三郎いいから。―ほら、文次郎、服を脱いで傷見せて」
留三郎を諫め、消毒用の焼酎や包帯を用意する。
「まだ、血が止まってないね。でもこれぐらいなら縫う必要はない。圧迫して止血するからジッとして」
そう言って、ガーゼを宛がい掌に力を込める。
「くっ…」
さすがの文次郎も苦悶の表情を浮かべた。
「はい、おしまい。それと鎮痛作用のある薬湯を飲んでいってね」
と、すばやく包帯を巻いた伊作がにこりと微笑う。
文次郎が顔を引きつらせたのは言うまでもない。蛇に睨まれたかえるのごとく、動けなくなり、ものすごく苦い薬湯を飲ませられた。
―存外遺作は最強かもしれないと留三郎は思った―
終