忍たま乱太郎

□苦い…
1ページ/1ページ

「伊作、頼む…」
 肩をおさえた潮江文次郎が医務室に入ってくるなり、床に胡坐をかいた。

「テメェ、それが手当てを頼む態度か!?」
 食満留三郎が食って掛かる。

「別にお前に頼んでるわけじゃねぇ!」
 文次郎は態度を改める気はない。

「伊作にだったらいいって言うのか!?」
「留三郎いいから。―ほら、文次郎、服を脱いで傷見せて」
 留三郎を諫め、消毒用の焼酎や包帯を用意する。

「まだ、血が止まってないね。でもこれぐらいなら縫う必要はない。圧迫して止血するからジッとして」
 そう言って、ガーゼを宛がい掌に力を込める。

「くっ…」
 さすがの文次郎も苦悶の表情を浮かべた。


「はい、おしまい。それと鎮痛作用のある薬湯を飲んでいってね」
 と、すばやく包帯を巻いた伊作がにこりと微笑う。
 文次郎が顔を引きつらせたのは言うまでもない。蛇に睨まれたかえるのごとく、動けなくなり、ものすごく苦い薬湯を飲ませられた。


 ―存外遺作は最強かもしれないと留三郎は思った―







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ