足利家の兄弟
□秘め事
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兄が結婚すると聞いて、ひどく衝撃を受けた。
「ねえ、兄者、女みたいに抱かれるのって、どんな気持ちですか?」
蝋燭の灯のみの部屋。足利直義は、兄、高氏を組み敷いていた。
「……」
高氏は、つらそうに視線を逸らす。
「勘違いしないでくださいよ。別に責めているわけではありません」
優しく微笑んで、艶やかな黒髪に口づけする。
「直義…」
「私達はいつまでも子供じゃない。こんな関係許されないのなんか初めから承知でした」
言葉では言えるが、心は痛い。
喚いたところで、いずれ、足利の家を継ぐ高氏が婚姻するのは決まっていた。
しかし、直義の辛さを高氏は半分も理解してないだろう。
辛そうな表情はしているが、それでもどこか安堵しているかのように見える。
高氏は楽な道を歩みたがっている。
北条に言われるまま婚姻し、出仕して、やがて生まれる北条の血を引く子供を愛して。
−だから、開放してあげますよ−
愛しい
憎い
胸の中に沸き起こる熱い炎は、相反する感情をよく似たもののように思わせる。
「今夜で最後にしますから、抱かせてください」
優しくて臆病な兄が拒めないのを知っているから−。
こくりと、首だけでうなづいたのを見て直義は抱きしめた。
昔よりも鍛えられた逞しい体は、けれど、ひどく頼りなく感じて。
頬に首筋に胸にキスの雨を降らす。
胸の突起を見つけ口に含んでかりっと歯を立てる。舌先でつつくと堅くそそり立つ。
もう片方は、指の腹で押し、親指と人差し指でつまんだ。
「んんぅ…」
固く目を閉じ、何かに耐えているようだ。
「兄者…」
脇腹を撫でるとビクリと体が跳ねた。
「あ…、ん…」
高氏は手の甲をカリッと噛む。
涙を溜めた目は高氏にそんな気はなくとも誘っているようだ。
直義は下に降り、高氏自身を口内に含む。
「くっ…」
根元から舐め上げられ、感じやすい体はそれだけで追い詰められる。
「んん…、た…よし…」
もっととせがむように頭をかき抱く。
「あぁ、はぁ、ん−…っ…」
仰け反って、熱い欲望の液を口の中にはなった。
それを直義は余すことなく数回に分けて飲み下した。そのたびに白い喉が動く。
「……」
「兄者…」
「あ、くぅ…」
濡れた指を中に押し入れてかき乱す。
「ただよし…」
高氏はもどかしげにしがみつく。
「あ…、んん」
慣れた体は指の数を増やしても痛みを感じないようだ。目は細められ、穏やかな表情をしていた。
十分に慣らした後、指をゆっくり抜き、足の間に体を埋める。
「ヒッ、あ…」
先端を押し当てると眉根を寄せた。しかし、その先の快感を知っている体は、早くとせがんでいた。
直義は兄の淫らな姿に酔わされ、理性を失いつつある。
腰を打ちつけ、抜いては勢いよく貫く。
「あぁ−、た…よしぃ、はぁ、んん、あぁ…んんぅ−…」
自らも腰を動かし、快楽に溺れる。
性液と汗が混じった臭いが鼻をつく。
「兄者、私はもう…」
耐え切れず白濁の液を中に放った。
高氏も少し遅れて絶頂に登りつめる−
∽∽∽∽∽
足利の御曹司と傍流とはいえ、北条家の娘との婚礼の儀は盛大に行われた。
綿帽子を被り俯き加減でよく顔は見えないが美男美女のお似合いの夫婦だともてはやされた。
朗らかに微笑む兄の姿は、直義には辛すぎて、ぐっと、拳を握る。
「兄者…」
切なげに呼んだ声は騒ぎの中にかき消された−。