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□一つになった掌
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慎吾さんの部屋に呼ばれた。
理由は「一緒に寝て欲しいから」
どういう了見だかまったく検討も付かないままだったが、会いたいが為だけにノコノコと部屋に来て添い寝を促され、一度は断ったが言い出したら、此方が良いといわなくても関係ないらしい、無理やりベッドに引きずり込まれた。

温かくて気持ちがいい、でもドキドキと煩い心臓は俺を寝かせてはくれないようだ。
ふと見た彼の端整な顔立ちに自分の頬が赤くなるのを感じ、眠っているのだから別に見てても平気だろと思うものの、意識とは別にそろりと視線は外される。
外された先に慎吾さんの手が目に入って誘われるように手を伸ばした。

寝てる慎吾さんにそっと手を重ねてみる。
俺よりすこし大きいその手は身長の差を表しているようだとおもった。
弱い力で握ってみれば握り返されて、驚いて引こうとしても全然動く気配が無くて、見れば眠っていたと思っていた彼の目はしっかりと開いていた。

「起きてたんですか?」
「ん、まぁ」

起こしたのではなくてよかったとほっとした。
その反面見られていたのではとおもうと恥ずかしくて恨めしいとも思う。

「なにしてたの?」

手はいまだ離れることなく、俺が離そうとしてもきっと離してくれないと判っているからあえて引こうとはしない。
引いたって力でかなう事は無いとわかっているから無駄な体力は使わない。
逆に一層強く握っても痛く無かったんだろうか、力が緩まることは無かった。

「なにも」

判りやすい嘘だ、だって手を重ねたという証拠があるから、でも何故握ったのかと聞かれれば自分でも良くわからないので答えることは出来ない。
慎吾さんは「何も」って事は無いだろうと笑うと俺を引き寄せて抱きしめた。
少し肌寒くなってきたこの季節に彼の体温はとても優しくて温かくて、あまりの心地よさにほぼ無意識に擦り寄る。
普段体温の低い彼だがやはり布団の中では温かいものだ、・・・というか、この人だったら冷たくても擦り寄ってしまうと、そうわかる位に自分はこの人が好きだと知っている。


「可愛い。」

噛み殺すような笑いの声を聞いた後、額に唇の感触がしてキスされたのかと認識する。
彼の手を握っている反対の手で額を押さえながら、男が可愛いといわれても不快になるだけだが慎吾さんに言われるんだったら嬉しいかもしれないと思う。

そんな自分にもうだめだと今更の事を思うけど、今更だって何だって自分のガラじゃないことをするのは抵抗が有る。
慎吾さんに可愛いと言われたことでも、キスされたことでもなく、自分が嬉しいと思ったことに一番照れた。

「好きだよ、隆也」

手は今だつながったままで、その手から指の一本一本に浸透して染み込んでいくような声が、言葉がまた嬉しくて、慎吾さんにも同じような気持ちになってくれるのだろうか、そう手探りをして進むような気持ちで俺も同じ事を言い返した。

「・・・俺も好きですよ。」

この人には俺が貰った嬉しいを全部そっくり返したいとそう思えるから、上に覆いかぶさるように体を起こして慎吾さんにキスをおとした。
一瞬驚く仕草を見せた慎吾さんは嬉しそうに笑ってくれたので其れにほっとする。

「随分と積極的だね。」

彼の空いている手で頭を押さえつけられて触れるだけのモノだったのが深い其れに変わる。
鼻から抜けるような声が自分から出て恥ずかしいが、それ以上に高ぶってもう止められなかった。

この少し低めの体温をした優しい手を冗談でも突き飛ばせる自信なんて無い、つもりも無い。

閉じた目は彼の姿を写さないが触れた指先で彼を感じた。

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