series SxA(first love)

□変わらない想い
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「あけましておめでとうございます。慎吾さん」
「ん、おめでと。隆也」

布団の上での新年初会話、ギシリと音を立てて軋んだベッド。

正月が似合わない洋風な島崎の部屋
カーテンの隙間から朝日が差し込んでいて、ソレを見ながら阿部は「あー」と溜め息をついた。
昨日の夜の朝日を一緒に見ようという会話はどうやら無駄に終ったようだと、そんな意を込めた溜め息だ。

「なに?溜め息なんかついちゃって」

島崎はゆったりとした速度で阿部の頬へ手を伸ばし、そのまま体を起して唇を寄せる。
ベッドの上で片手を捕らえて縫いとめた。

そうするのは阿部が逃げるからでは決してなく、ただの雰囲気だと彼は言う。
現に阿部が抵抗をする様子は無いし、それどころか大人しく目を閉じてソレを受け入れた。

「ん…」

触れるだけでは物足りないのか阿部が空いている片手を島崎の背へ伸ばす。
ぎゅっと握られた服に引かれる様にさらに体を沈めた島崎は目を薄っすらと開けてニヤッと笑んだ。

唇を離し、それでも動けば掠る程度に留めて阿部の視線を攫うのは既に彼の特技ともいえる。
睫毛も触れ合いそうな程近いというのに、島崎は今までのいやらしい笑みを見せつけるかのように向け、
阿部も今彼がどんな風に笑っているかすぐさま感じた。

「新年早々、随分積極的じゃない」

ボソリとした言い方で、他に誰が居る訳でも無いのに内緒話をするような音量と、
吐いた酸素が唇を掠める。否、それどころか口の中まで、体中に巡るような感覚。
ドキリとして体を揺らせばしっかりと合わさってしまいそうなソレに阿部は戸惑って強く体をベッドへ沈めた。

嫌なわけではないだろう、ただ恥ずかしいだけなのだ。
直ぐにでも顔を逸らしてしまいたい衝動と、ただ何も考えず唇を合わせてしまいたい気持ちが交差して阿部を混乱させた。

反論をしようにも今島崎から受けている感覚が彼に行ってしまうと思うと恥ずかしくて仕方が無い。

「…。」

だから阿部はただ黙り、強く唇を噛締めた。
ソレが今一番自分の感情に適しているとおもったからだ。
顎を小さく引くだけで精一杯だった。
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