series SxA(first love)

□突然のcall Said-S
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驚きからかビクリと震えた愛しい指、赤く染まっていく頬、俺はいつからこの子にこんなにものめり込んだのだろう・・・。


隆也君がペラペラと雑誌を捲ってその様をソファに座って気付かれないように盗み見る。
大きく首もとの開いた服、今日は温かいから着てきた上着の下はやけに薄着というか、色気がある服だった。
俺がいるソファの前に座っている彼の見えるうなじと鎖骨がやけに色っぽく感じて、無意識に噛み付いてしまわないうちに目を逸らした。

雑誌を捲る指、見つめる瞳、こっちを向いてほしい。そんな甘い言葉を思い浮かべる自分に自然と笑みが漏れる。

俺が恋をしたらこんなに独占欲が強いなんて知らなかった。

雑誌にさえも嫉妬するなんてみっともないと思いつつ焦がれて止まらない。

「隆也」

特に考えもなくそう呼んだ。
その響きに世界が揺れる。喉が渇いていくのがわかって酷く戸惑った。

向けられた目に揺れる感覚が大きくなって目を逸らす事もできずに、驚くままこちらを見る隆也君と目があう。半ば反射的に笑った。
パチパチと繰り返される瞬きとぽかんと開いた口が可愛いと思う。彼の顔は心なしか赤く染まってそれがまた俺を煽るのだ。

「・・・へ?・・なんて?」

きっと聞き間違いかもしれないとか思いながらだろう、聞き返してくるその声に先ほど反射的に浮かべた笑顔と同じように笑い、呼んだままに言い放った。
彼の顔はみるみる赤く染まって其の様が楽しい。
どう対応すればいいのか迷っているとわかるウロウロさ迷う視線に、もうなんだかわからないほどの愛しさがこみ上げる。

この子は俺をどうしたいんだ・・・。

そんなこと思ったって彼にだってわからないだろう、俺がこんなにも好きなんだと言うのに気付いていないだろうから。
自分の方がより好きだなんてバカップルな喧嘩はするつもりないけど、きっと俺のほうが愛は大きい・・・とか自分でも恥ずかしくなるほどのことを想ってみた。

最初はこんなつもりじゃなかったのに、そう思うのは後悔じゃなくて抑えの効かない自分の感情を咎めるためだ
でも別に咎めたって収まりが付くわけじゃない、どうやったって止められない感情なんて彼が始めてだからどう収めればいいのかわからない。

彼の後押しも手伝って、確かめるように隆也と呼んだ。
呼ぶたびに苦しいけれど、でもソレが逆に心地いいと思えるその響きに隆也君が止めるのも聞かずにもう一度言おうと口を開いた。

そこでその開いた口を手で塞がれてチラリと見れば彼の顔は真っ赤に染まっていて、体温は手のひらから伝わってとても温かい。
優しくなでてやれば目を細めて動揺からか少し涙目になっていた瞳がほっと落ち着いた。

「なんでいきなり・・」

そろそろと離された手とあわせて言葉が飛んでくる。

なんで、といわれても突発的なことだ、別に考えがあるわけじゃない。

でもなんとなくじゃ納得してくれないだろう、それに俺はこれから彼をこうやって呼びたい。
一度声に出して言ってしまえばもう戻れない響き、他の人にはそうでなくても俺にはそれほどの力があるのだと、今からたくさん呼ぶうちに彼に知って欲しいと思う。

「もうそろそろ呼んでいいかなと思って。」

嘘じゃない、もう付き合って随分たつから。
ふと思いたって呼んでみたという気持ちは隠さずに、理由だけをつけて言ってみた。
隆也君は考え込んでしまって反応は返ってこなかった。

「嫌?」

視線を床に向けた隆也君の顔を覗きこむようにみれば目が合った一瞬否定的な顔をされて少し焦る。

「・・・い、や・・・じゃない、ですけど」
「けど?」
「・・・困ります。」

合っていた目が逸らされた。

嫌ではないけど困る。わりと予想が付いていた答えだ。

彼は俺のことが最初と変わらず好きだという自身はあるから、恥ずかしさに押されて嫌だというか俺の呼び方に戸惑って困るというかどちらかだとなんとなくわかっていた。

そりゃ、呼び捨てにされればそうとう嬉しいかもしれないけど強制はしない、困らせるくらいなら別に今のままの呼び方で十分だと思える。

そこで彼の顔が一気に赤くなった。

『・・・可愛いなぁ』

思うが先か引き寄せる。

すっぽり収まった腕の中で、力を込めてやれば苦しそうな声をあげた。
喉から笑い声が漏れる。
いきなり俺がさらったからだろう、隆也君は不思議そうに俺を見つめた。

「・・・なん・・・」
「別に、」

別に俺のことは呼ばなくていい、だけど俺に名前を呼ばせて欲しいんだ、それだけでなんとなく近づけたような気がすると思うから、だってさっき名前を呼んだ時世界が振動したような衝撃を受けたから。

そう、隆也君に最初の部分だけ言ってみる。
全部言うのは恥ずかしくて、出来れば伝わらないようにと思う。

「お願い」

戸惑っていることが見て取れる彼に優しく囁いて口付けた。
今だキスになれないようで、何時も突然すると息を忘れて苦しそうにする。
其れも可愛い、酸素を欲して必死に唇を離そうとする隆也君に無理やり深く口付けて、涙目になった後に観念して首を振った。

唇を離せばとろんとした目をして苦しそうに肩で息をする。そんなところが更に可愛いから、半開きの唇に掠めるような口付けを落とす。

「好きだよ、隆也」

本心だ、笑って心から言えば、ぼぅっとしていた彼はいきなり起きたみたいな、其れでいて驚いた顔で此方を見た。

「・・・っ・・ずるいっ。」

俯いて顔を隠す。隠せるわけが無いとわかっていながらの行為なんだろう、でもやっぱりこっちを見てもらいたい、顔を見たい。
そう思って何度も何度も彼の名前を呼んだ。
そしたら俺に擦り寄ってきてもっと顔が見えなくなったけど温かい体温が伝わってきて心地良いから、隆也が此処に居るってだけで良くなってただ抱きしめた。

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