series SxA(first love)

□無差別自慢
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「桐青の学園祭はすごい」何処がどうすごいかはしらないが、とにかくそんな噂を聞いてに島崎に聞いてみればどうだろうねと感心なさげに言っていた。
そういうのどうでもよさそうだもんなと変に納得してそれ以上聞かないほうが良いと思ったがその後直ぐに

「来たい?」

聞いた島崎に阿部は凄い勢いで頭を上げて行きたいですと反射的にといえる速さで答える。
島崎はそんな阿部に柔らかく笑いかけて頭を優しくなでた。阿部が目を細めながら文化祭について気になった事を質問していく。

「島崎さんなにするんですか?」
「んー・・・たしか、舞台?」
「え・・・出るんですか?」

それは少し見たいかもと阿部が期待を含めた目を向けて島崎を見れば首を振って出ないと返し、変わらない笑みを浮かべてその理由も付け加えて話す。

「部活の方が忙しいからあんまりクラスは参加しないんだ」
「部活・・・?」
「そう、野球部で喫茶店やんの」

よかったらおいでと誘われて、それが嬉しかったのか阿部は直ぐに了承した。



「・・・喫茶・・・店・・・?」

後日阿部は桐青学校へいってグラウンドの方向へいけばものすごい人だかりができている建物を見つけた。
そこへ近づけば近づくほどあまりの人の多さに帰りたくなるが、ちらりと目線を横にしてみれば測ったように立ててある看板に『野球部 寮』という文字があって島崎と関係のありすぎる言葉に仕方無しに人ごみの中へ入っていく、窓には黒いビニールが貼ってあって中をのぞくことは出来ないがこの盛況ぶりだと休憩とる時間が無いだろうと思い、携帯で呼ぶのも気が引けて、中に居ると決め付け入り口から中をのぞいた。

並ばなければ中に入れないのだろうがこの長い列に並ぶ気力がなく中に居るのだけ確認しようと頭をだせばバチリと目があった人間が一人

「あっ!!」

そしてその声の大きさに振り向く人間は確実に居るわけで、その振り向いた中に目当ての人も居てほっとしたがその格好を見て唖然としてしまった。
島崎は白シャツに黒マントを羽織った格好をしており、振り向いた途端ふわりと笑いながら綺麗な指の仕草だけで近くへ来いと呼ぶ、それだから阿部の顔は一瞬にして熱を帯び、ごまかせると信じてほの暗い室内へと足早に入っていった。

良く見ると全員何らかの仮装をしており一瞬阿部に降り注いだ視線はあまりの忙しさに必然的に客の方へ向く。
最初に声をだした彼、仲沢もちらちらと気にしながら忙しく働きだした。
島崎は阿部とそのまま端の方へより、邪魔にならないところで話をすることにした。

「いらっしゃい、来てくれたんだ」
「あ、はぁ、まぁ・・・すごいですね」

辺りを見回せば狭い室内に満席と言うほど人がいて、そのほとんどが女性であることがわかる。
これだけ人が居る状態での締め切りの室内はとても蒸し暑く、島崎はうっすらと汗をかいていて多少へばっているように見えた。

「なんか、全然客がへらねーの」

額の汗を手で拭きながら言う、へばりつく前髪が更にかっこいい気がしてこれじゃぁ女の人はほうっておかないだろうと思い心の中でため息をつく、
室内の息苦しさに多少くらくらしながらもう一度室内を見回す、人目当てならば一度座った人は中々帰らないのではないだろうかと思って聞いてみれば島崎は困った様子で頷いた。
遠くで慎吾と呼ぶ声が聞こえて嫌そうな顔をしながら阿部に一言断りそちらへ人の波をくぐりながら走っていってしまう
どうすればいいのかわからなくなってちらりと見たカウンターらしい場所には黒い紙に白いペンで書いた「ハロウィン」の文字が目に入って仮装の意味を理解することができた。

しかし、わたわたと動き回る部員にコレでは大変だろうなぁとぼーと壁に立ったままでいれば、一番近かったテーブルの女性に声をかけられた。

「はい?」
「あのー、店員さんですか?注文したいんですけど・・・」

どうやら島崎と話していたことで仮装もしていないのに店員と間違えられたらしく、違いますと直答えようとしたが忙しなく動き回る店員を目の当たりにしていたため、呼ぶのに罪悪感を覚えて注文を聞くくらいならとメニューを開きながら見せる女性に何も言わずに頷いた。
注文を聞いて店員が伝えにいっているのだろう場所へ行き、出てきた黒い服の仮装しているのかわからない店員を捕まえる。
こういう人もいるから間違えられたのかも、と阿部は彼の服装を見ながら思った。

「すいません」
「は・・・」
「「あ」」

声をかけて捕まえた店員は桐青の投手である高瀬で、彼も阿部も知っている顔におもわず声が出る。そういえばこの人も居るんだと思い出すと頭を切り替えて先ほどの注文とそういってきたテーブルを指差した。

「さんきゅー」

そういって布で敷居られている中に先ほどの注文を伝えてから出てきた。
マウンドではポーカーフェイスの彼の顔はあまりに参っていて思わず労いの言葉をかければ、明らかにテンションが低い面持ちで首を振った。

「暑いし・・・」

風一つ入ってこない部屋に確かにと思う、入り口から外を見ればまだまだ長蛇の列は続いていた。
阿部は、今日は曇り気味だしわりと涼しくてよかったなと考えて、一つ提案する。

「外にテーブル増やせばここ人数減って多少は涼しいんじゃないんですか?」
「うーん、・・・人手が」

割といっぱいいっぱいな室内をみて、人が多いから大変なんだと思うんだけど・・・とか思っていると仲沢が走ってきて阿部にがばりと抱きついた。

「ちょ・・・」
「っ・・・かれた・・・」

酸欠も手伝ってかぜはぜはと息切れをしている。

「・・・その格好なに?」

外から見たときはあまり判らなかったが彼はフランケンなのか狼男なのかわからない格好をしていて、まず疑問に思った事を率直に聞いてみれば弱々しい声が返ってくる。

「最初は・・・フランケンだったんだけど、準さんが耳暑いって俺につけた・・・。」

その言葉に高瀬さんは狼男かなんかだったんだろうなと横を見れば此方も弱り気味の様子で、息をついた。
この状態からこのままでは色々危ないような気がして思ったことを率直に言うべく口を開く

「・・・酸欠がひどいんで窓開けた方がいいですよ。あと本当に外でやったほうが人多くさばけるとおもいます。外に居る人間と中に分けてやればこの人数ならわりと平気だと思いますし、とりあえず人が多すぎて動きづらいからぶつかったりしてもたもたするんですよ。」

その暑さからか煩さからか、結構威圧的な態度で言う阿部に高瀬と仲沢は驚きながらもあわてて支持にしたがい始める。
外へ出てテーブルを数個置いていく二人をちらちらと見ていた島崎が指示を出していた阿部の後ろに立ちそっと肩を叩いた。

「え?慎吾さ・・・?」
「隆也も手伝って。」

にこりと極上の笑顔で言われて其れに不覚にもときめいた阿部はぽかんとした状態だが頬をいくらか染めながら「ハイ」と頷いた。


「ちょ、俺もするんですか!?」
「当然」

建物の裏に連れて行かれて包帯を手渡された阿部は首を傾げたが、服を脱がし始めた島崎の行動で理解した。
慌てて脱がされていく服を押さえつけて抗議の声を上げつつ目を向ければ、楽しそうな島崎とばっちり目が合って阿部の顔は赤く染まる。
キスされそうなほどの至近距離に気を取られていると急に力を込め始めた手に追いつかず、服はあっさりと脱がされてしまった。

「ジーパンだし、ズボンはそのままでいいから」
「っ!あたりまえだろ!!」

阿部の持っていた包帯を奪い取りぐるぐると巻いていく、嬉々として巻く島崎に聞こえるようにため息をついた。

「寒いんですけど」
「俺に抱きついてれば?マントあったかいよ」

上半身裸で良い季節ではないと文句を言えば楽しそうな笑顔ですんなりと返される。

「それじゃぁ意味ないじゃないですか・・・」

頷いたが不本意ながらもこれから仕事をするのだからと、呆れ顔を向けてやれば島崎は考えるそぶりを見せてあっと小さく声をあげた。

「?」
「ちょっとまっててね」

そのまま何処かへ行ってしまった島崎を見ながら中途半端に巻かれた包帯を腕から取り払う。
暇つぶしに巻きなおしていると窓が開いて中から島崎が出てきた。

「・・・何処から出てくるんですか・・・」

少なからず驚いた自分が恥ずかしくてごまかすように呆れた声を口に出しても島崎は笑うばかりだ、もう一度ため息をつきそうになってその前に島崎の持っているものが目に付いた。
なんですかと聞く前に其れを手渡されいくつかに畳まれている布を開いてみれば黒い長袖のシャツ、ものばかり見てもやはり用途がわからないと阿部は島崎を見つめる。

「其れ着て、少しはあったかいと思うよ」

島崎に押されて着てみればその服は多少大きく、普通の服より広めに取られている首元は阿部が着ることで肩にギリギリ引っかかるというくらいで袖も長く、

「なんですか・・・これ」

そういう阿部の手から包帯を取り上げてその服の上からぐるぐると包帯を巻いていく、もう抵抗しても意味が無いだろうと思っているのか、
阿部に彼を止める仕草は見られないが返答を待つ目は向けられた。

「俺の私服」

しかし、返された返事も阿部の待つものではなく、しかたないので更に質問をする。

「なんで?」
「あったかいだろ?」
「・・・自分の服着ますよ・・・」

じっと見つめ合うようにして合った目を阿部が耐え切れず横にずらすと島崎は阿部の口にキスをした。

「俺じゃないと意味無いから」

やはり意味は伝わらなかったが恥ずかしさに耐え切れず目を伏せ、それ以降本当になにもいえなくなってしまった。


包帯の使命を果たさないくらいにダボダボに巻かれた其れを右腕から始め左腕のほうまで巻き終わりきゅっと縛る。縛ったついでに手首にキスされて
阿部の腕はびくりと震えた。

『このひとは外だという自覚が無いのか構わないだけなのか・・・』

どっちにしろ始末が悪いと手を引く島崎の後を追った。
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