series SxA(first love)

□現実と見れたのは貴方が絶対だったから
1ページ/12ページ

人を好きになったことなんて無いと思う。
そりゃ付き合いとか、あったかもしれないけど、
結局は「野球」で泣いたり別れたりしていった。
野球関係じゃないと恋も出来ない。酷く自分が不憫に思えたりしたけど「どうでもいい」とも思ってた。

男を好きになるなんて思ってなかった。
考えても無かった。
もう遠い過去として認めてしまいたいほどの自分を傷つけたあの人には
恋ではない恋に似た(たぶん)憧れという名の感情は確かにあったけれど・・・。
あの人はあこがれる対象ではないとふっと気づいたあの・・・重苦しい思い出の一瞬、
瞬きをするような「一瞬」にその恋に似た気持ちは消えてしまっていた。



あれから誰に惹かれるもなく、焦がれる言も無く続けた日々は、
「野球」でなにもかも構成されているのだと思うほどの俺の日常が、
ソレとは何の関係もない場所であっさりと終わった。

そうハッキリと自覚ができるほどに彼に惹かれた。

その人とはまったく関係の無いといわれるとそれは嘘になるが、たいして重要な関係があったわけでもない。
ビデオを見たときもこんなに気持ちは高鳴らなかったはずだ、試合をした時も、ギリギリの難しい球を捕らえていたあの瞬間にも、けしてなかったはずのソレが目の前にして言葉という言葉をいえなくなるほどに全身全霊で震えていた。
心音しか聞こえないような世界で、顔を朱に染めていると自覚する俺は、きっと偶然出会って話しかけてきた彼にとってすごく可笑しな子供のように見えているのではないか、と酷く恥ずかしく思えて戸惑った。

『こんな事を思うような人間でも、そんな感性を持っていた覚えも無い』

本当に心からそう思ったが、どうやら止まらないらしい怒涛の想いとかいうやつに内心押しつぶされそうになりながらじっと耐えて、大丈夫?っと、声をかける彼「島崎慎吾さん」に大丈夫ですと簡潔に答えた。

顔を覗き込む、手を額に置かれる。笑いかける。
その笑顔にドキリといっそう大きく心が撓る。
その時俺は「怒り」の感情以外で衝動的に何かをするという行為を始めてした。
自分より少し高い位置にある頭の後ろを触っている彼のその右手を掴んで

「・・・・あの!」

呼び止めてしまった。
びっくりしているのが見て取れる彼を見てやらなきゃ良かったとも思ったが此処までして何もありませんでしたとも言えないし、
・・・・なにより気持ちが止まらない。
初めての感覚、きっと島崎さんが今びっくりしているのよりも俺の其れの方が複雑だといえる自信があった。

「・・・・・・・っお、俺と付き、合ってください!」

『驚き』というか『唖然』というか、よく読み取れない彼の表情にマイナスの思考だけが渦巻いて、あぁ、言わなければ良かったかもと後悔する。
たった一文言うのに何度も突っかかって、こころの中で俺は三橋か!!と突っ込みもした気がする。
今日はなんたらで、明日はなにをして、いろんなことが現実逃避のようにぐるぐるうごめいたがそんなことを吹き飛ばすように次の言葉が飛んできた。

「いいよ」

こうして島崎さんと俺のお付き合いが始まった。

それはある散歩をしたくなるほどにいい天気の日、良く行く場所より少し遠いコンビニでの話し。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ