2万hit企画
□糸は繋がっている
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「りーお」
「いはい(痛い)っ!!!」
いきなり頬をぐんっと引張ってきたのはヤマさんだった。
引退したというのに度々来るのはどの3年生も一緒のようで、受験に忙しいと野球部に寄り付かない、そう割り切りそうだと思っていた和さんもいて、慎吾さんやヤマさんを連られてくるのはどうやら俺に用事があるかららしい。
「彼女とはどうなってるんですかー?」
実際用事と言うのはどうでもいいこんなこと、会えば二言目にはコレだ。
実際俺の彼女、・・・否、彼?には皆会わせていないのだが、俺に彼女というのがそんなに珍しいのか、会うたびに聞かれる。
和さんが謝りながら聞いているのは気になってるということなのか、自覚しているよりももっと、ものすごい興味を引かれるのかもしれない。
「どうって?なんスか?」
「AとかDとか」
古い聞き方をしてくる慎吾さんの顔はニヤニヤとしていて、どういう話しを期待しているのか、と言えばきっとえっちな話しを期待している。
それかからかえるようなネタ。
まぁ、俺が言えるのは嘘をつかない限り
後者しかない。
「・・・」
「・・・?」
「なんも・・・」
ないです。段々小声になる。
だって本当に無いんだから。
手が触れるだけでも躊躇してしまう恋なんて初めてで、そもそも恋自体が初めてなんだけど、こんな漫画見たいなコトって本当に人生に用意されてるんだってちょっとだけ感動したりもした。
高校生にもなって手も繋げないなんて、それこそ恥ずかしい事なのかもしれないけど、俺には案外心地よかったりして、幸せだって胸張っていえる。
「まじで?」
「マジです。」
付き合って何日か、そういわれて指折り数えるのは時間稼ぎ、わかってるんだ、毎日数えてるから。
出会って何日?そう聞かれればまるで挨拶を返すように2ヶ月と言えた。
それでも数えて見せるのはそんな自分が恥ずかしいからだ。
「2ヵ月ッスね」
絶句したのは慎吾さんだけではなく山さんもで、和さんの反応は至って普通だ。
和さんは健全なお付き合いをしてそうだから、というかその普通の反応が今の俺にとっては一番好ましい。
「うわ、マジありえねー」
「利央ほんとはきらわれてるんじゃないの?」
反対に彼らは何てことをいってくれるんだろう、まるで別れろといわれているような気分になってそんな事ないと首を振る。
突けば出てくる言葉、ソレはきっと幸せに満ちていて、綺麗なオーラを放っているかもしれない、側に居るだけで良いなんて、飯事って、言われるかもしれないけど、だって、ねぇ?
「だって幸せですもん」
うわぁ、という声が聞こえてきたのはその直ぐ後だった。
何故か不快そうに顔を歪ませ(多分冗談)なんかどっかの悪者みたいに走っていくヤマさんと慎吾さんに、和さんが「何がしたいんだ、あいつら」そうボソリと零して思わず笑ってしまった。