2万hit企画

□モノ2つ
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「隆也、たーかーや。」
「なんですか?慎吾さ・・・、痛っ」

おでこを人差し指でとんっと押し、島崎の唇は弧を描きながらも「ダメ」だとソレを指摘する。

「敬語。と、さんづけ。ペナルティ2だね。」
「い、行き成りは無理ですっ」
「はい、3回。」

顔を赤く染めて額を押さえながら島崎を見ながら抗議する様子を、彼は楽しそうに笑って首を振りながらもう一度「ダメ」と繰り返す。

阿部の生活用品を運び終えた今日、何も無いと称される島崎の部屋には大量のダンボールが積み重なっていて、全てはまだ開封もされていない状態で放置されている。

この部屋へ二人の同居が決まった時、二人の間に約束事として「敬語禁止」と、そう島崎が一方的に決めた。
突然の事で阿部も先と同じような反論を試みたが、今迄島崎が住んでいた部屋を半分借りるという立場上強く言えずに、半ば渋々頷いたのだ。

「あんなに練習したのにね。」

そういう島崎の顔は至極楽しそうに笑っている。
阿部は眉を寄せて不満そうに島崎をにらみつけた。

「あんなの・・・練習にはいりま・・・入らない、し。」

むすっとしたままの阿部の頭を優しく撫でて引き寄せる島崎が顔を近づけ、阿部の唇にフレンチキスを落とす。
ピクリと肩が揺れたが、ただそれだけで抵抗もせずにそっと目を閉じた。

「またコレが罰ゲーム?」
「そう。」

練習としてやった時もペナルティの数だけ罰ゲームとしてキスをされたが、特段罰ゲームとは思わない阿部が、コレでは直そうと思わなくなってしまうじゃないかと心の中で悪態づく。
はやく、と急かす島崎の目に閉じてと手の平を当てて閉じられたことを確認してから唇に唇を寄せた。

「あと2回。ちゃんと隆也から、ね?」
「わ、わかってる・・っ」

二回分きっちり唇を押し当て、染めた頬を直せないままふぅと息をつく。

「じゃ、やっちゃおっか。片付け。」
「・・・言ってる事とやってること違うんですけど・・・。」

ぎゅぅーと腕の中に阿部を抱きしめながら言う島崎に阿部が呆れながら言うのに対して、ニヤリと笑った彼がもう一度唇を掠め奪った。




「二人だと早いな」

んっと一つ伸びをした島崎が大分片付いて来た部屋の中を見回して満足気に言うのをダンボールから衣服を出しながら阿部が見る。

「俺の時は一人だったから時間かかって大変だった」

2年前からこの場所に住んでいる彼は、その住み始めたときのことを言っているのだろう、確かに現状を見て二人でやっていることをもし一人でしたとしたら単純に倍かかるのだし、経験の無い阿部一人ならばもっとかかっていただろう。

しかしながら、其の言葉を聞いて阿部が「大変だったんですね」と言うにはいささか難しい、何故かといえば付き合って3年目の彼等だが島崎は引越しするさいには阿部に一言も言わず、全て片付け終わった後に事実を知ったのだ。
大学のある場所や部屋を借りる事は知っていたが、その日に手伝いにも呼ばれなかったことが不満だったようでそれから少し機嫌の悪くなった阿部を島崎は焦りつつフォローをしたという過去がある。

ただ、阿部も根に持つ性格ではないので今更そのことを掘り返すつもりも無いが、話題に乗りきれないのは確かだった。

「じゃ、暗くなってきたし、あとは明日にしようか」

其の気持ちを知ってか知らずか、島崎は衣服を取り出した状態でぼんやりと止まっている阿部を後から抱きしめながら言う。
阿部はソレに気がついて前に向けていた視線を島崎に向け、大人しく頷いて持って広げていた服を箱の中に戻した。

「ね、今から買い物付き合って。」
「え?あ、は・・・。」

阿部を立ち上がらせる為に引き上げながら言う島崎は引かれるまま立ち上がる阿部の頬へキスを落とす。
ただ不適に笑う彼の姿に罰ゲームだと言うのを理解して、解っていても十分に阿部の頬は赤く染まる。

「うん、じゃぁ行こう。」
「・・・ん。」

準備してくると隣の部屋に向かう島崎に阿部は恥ずかしさからか、どこかそっけない返事を返した。
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