2万hit企画

□僕を呼んで、好きだと謳って
1ページ/3ページ

昼は暖かく日の光で十分、むしろ暑いくらいの時期だ。
俺にはまどろむ位に丁度良い温かさでぼぅっとしているだけのこの時間、瞼がどんどんと重みを増してカクリと一つ、頭を落とす。

「・・・ん。」

眠くて仕方が無い、部屋の主は今し方彼の母親に呼ばれて階段を降りていってしまった。
話して気を紛らわす事もできず、気温よりはいくらか冷たいフローリングにゴロンと寝転がって頬を押し付ける。

人の家だが彼の部屋だ、気にする事でもないだろう。
きっと怒られたりはしない、それどころか「仕方ないな」とか言って笑って頭を撫でてくれるかもしれない、それもちょっと楽しみだ。

「ん〜」

少し手を伸ばせば柔らかい絨毯に指先が触れて、さすがに床が固く頭が痛かったので純炭の上に四つん這いで移動し中心にある机を避けて横になる。
日が傾く少し前まで日が当たっていた絨毯はポカポカという擬音がピッタリ合い、指で触れた感覚より数段柔らかく感じた。

このまま寝てしまうのではないかと思うくらい気持ちがいい、そう思うが早いか一度試しにと閉じてみた瞼が開くのを拒む。
寝てしまうのは少し忍びなくてまるで寝起きのような辛さで目を薄っすらと開けた。

そのときぼんやりと見えた部屋の扉がガチャリと音を立て開く。
顔を上げる事もせず意識的にはシッカリと目を開けてドアから入ってきたこの部屋の持ち主の姿を見た。

「・・・」

目が合った瞬間、彼は驚いた顔をして目を細めクスリと笑う。
綺麗な顔で笑うのを見てだらしない自分が少し恥ずかしくなったが、近寄ってきてくれる彼の動きを見ても起き上がろうとはしなかった。

もしかしたら想像通り笑って頭をなでてくれるのだろうか、少し期待をこめて近づく彼を待つ。

彼は俺の正面に腰を下ろして重力に逆らわず落ちる前髪を彼の指先がそっとかきあげて其の延長のように優しく撫でた。
せっかくかきあげた髪が下へ落ちて先ほどまでと然程変わらずに位置どる。

「眠い?」
「ん、すこし。」

何度も何度も髪をかきあげながら目を細めて聞く彼に、別に反論する理由も無いと素直に首を縦に振った。
瞼を落とせばきっとあっという間に寝てしまうだろう自分に気がつきつつ、彼の頭に触れる手が心地よくて目を閉じた。

「・・・ちょっと手、あげて。」

彼が何を考えたかは判らないが手首を持たれ、そっと促されるので言われるままに持たれている方の手を上げる。

「何?」と問う暇も無くするりと其の間に入ってきた彼の体がピタリとくっつき、彼の手が頭の後ろに回って苦しいくらいに強く引き寄せ抱きしめる。

「はい、ぎゅー。」

「ぎゅー」などと言っているところを彼のことを良く知るあの人たちが見たらどういうのだろう。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ