2万hit企画

□True
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俺の父親が今俺の母親と結婚する前に、誰か付き合っていた人がいたとしても不思議じゃない。
結婚してからだったら問題あるかもしれないが・・・。

俺が生まれたのは二人が結婚して半年後で、「出来ちゃった婚だったのよ」なんて母さんが笑って言うのをただ「そうなんだ」と興味のない風にしか聞いてなかった。

だから、その、俺が産まれる二年前に、父親に彼女がいて、其の時にもしもその人に子供が居たらと考えると・・・。

「つうことで、兄弟らしいんだけど・・・俺と仲良く出来そう?」

動揺して聞いている俺に対して余裕そうに笑いながら言う彼は島崎慎吾と言う。
この間試合をした桐青高校の野球部、俺がつけた通称「いやらしい(バッティングをする)人」



この日、甲子園が終わって秋にも差し掛かるような少し肌寒くなっていた季節に田島伝で連絡があった。

『大切な話しがあるから駅前の喫茶店に来て欲しい』

俺に向けての文章をメールで一行、ただそれだけ。
誰からと聞いても田島は、仲沢からだが送ってきた主は知らないというし(仲沢で無いことは確からしい)、怪しすぎて無視しようと思ったが『大切な話し』に惹かれてやって来たのだった。

何時行けばいいんだと思ったが、不明だったので部活の後でも大丈夫だろうと決め付けて、いつも通りの帰り道に少し遠回りをして喫茶店へとはいった。
『西浦』近くの『駅』で『喫茶店』といったら一つしかなくて、閉まっているのではないかとも思ったが其処は全く心配なかったようで、喫茶店の窓から暗くなってきた外に向けて光が漏れている。

とりあえず誰も居なかったら悪戯として帰ろうとドアを押し、中に入った。

ドアに付いたベルがカラカラと音を立てる。
中に居た店員が俺に気付いて「いらっしゃいませ」と声を上げた。
入って辺りを見回すと客は疎らで、でも思いのほか暗い奥のほうは暗い、とりあえず見える範囲で知っている「であろう」人を探した。

すると壁際一番端の席の男が立ち上がって必然的に視線が其方へ向く。

「あ。」と思った。

招かれるまま近づけば、知った顔に「何故この人が」と首をかしげることになる。
ここで俺を待っていたのが島崎慎吾、その人だった。

彼は俺がそんな反応をする事を解っていたというようにふっと笑うと、先ほどまで座っていたソファに腰掛けて俺も座るように促される。
訳がわからなかったが、とりあえずメール通り此処に居たのだからと彼のテーブルを挟んで向かい側のソファに座る、何を言えばいいか解らなかったし離す事も特に無かったので直ぐ本題に入った。

「大切な話しって、なんですか?」

彼は至って変わらない表情のまま、机の上にただ一つだけあるコーヒーカップを持って中身を飲む。
大人びた其の雰囲気に、アンティークなカップも、香りすら、全てが似合っていてその動作に一瞬見とれてしまう、試合のときはそんな事気にしてもいなかったが、二人だけとなると相手を観察してしまうのは仕方が無いと心の中で言い訳をした。

「コーヒーで良い?」
「・・え?・・・あ、はい。」

彼が店員に軽く手を上げて注文するのを見ながら、ありがとうございますと頭を下げれば、上げた手を振ってなんでもないように其の手を下げる。

「話しって言うのは。・・・・・」
「・・・・?」

ソファの背もたれに寄りかかっていた島崎が話を切り出そうとした途端、あけていた口を噤んで背もたれから背を離し、机に頬杖を付いた。
そのまま視線を斜めに、机の端の方へやって唇を結ぶ仕草をする。
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