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□Sunday 退屈なんて無縁な日
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学校も部活も休みの貴重な日曜日、昨日遅くまで起きていた阿部の睡眠を阻むように電話が鳴った。
薄目を開けて音に反応を示してみれば鳴っているのは正しく彼の携帯電話、
自分の近くで鳴り続けるソレを家の者に出るのを任せる事もできず上手く動かない手でなんとか電話を引き寄せる。

手繰り寄せている間に電話が切れないだろうかと期待を込めて思ったが、そんな気配は無く通話ボタンを大人しく押した。

「はい・・・?」
「よー!」

相手もろくに見ず出た阿部は向こう側から聞こえる大きな声に迷惑そうに目を細める。
携帯から耳を外し、このテンションは寝起きにきついと眉を寄せつつ、彼なりに気合を入れて気のない返事をした。

「なに。」

そっけないソレに電話の相手、田島は気にしていないのか掠れた阿部の声を聞いて首を傾げる。
いつもと違う、そんな違和感を感じたのだろう、湧き出た疑問をそのまま口にした。

「寝てた?風邪?」
「風邪なんかひくかよ・・・、寝起き。」

2度寝は許されないと悟り、ここに居ては辛いだけだと布団から重たい体を持ち上げて這いずり出る。
壁を背もたれに寄りかかり、冷めない目を擦りながらそれでも最初よりは幾分かはっきりと返答を返した。

「で?なに。」

2度目の事もあって、最初よりもう少し多く不機嫌を織り交ぜた言い方だったが、やはり田島は気にせずにおそらく屈託の無い子供のような笑顔で話しているのだろう。
安易に想像がついた。

「今日阿部ん家遊び行っていー?」
「はぁ?・・・なんで?」
「おきたらだーれも居なくて暇なんだよー、なー。なー?」

末子特有の駄々というものを朝っぱらから聞き、阿部は迷惑そうに一度嫌だと断ったものの余りの粘り強さにため息をつく。
電話での相手が面倒だと渋々了承したのだった。

「じゃぁ行くなー!」
「・・・いまから!?ちょ!!たじ・・・」

ツーツーと電話が切れたことを知らせる音にもう無駄な事と知って耳から携帯を離す。
勝手ばかりの田島に腹を立てつつ、息を一つついてベッドから降りた。
イライラしていても始まらない、彼は結局くる事に決まったのだから。
そう言い聞かせて箪笥から着替えをひっぱり出す。

『・・・何時ごろくるんだ?』

今から出てくるのかもしれないしもう来る途中なのかもしれない、彼なら後者の例でも十分にありえる。
寝巻き代わりのシャツを脱いで着替えたが、下はジャージのままで部屋を出た。

「ねー・・ってあれ?」

階段を降りて居間に顔を出す。
居ると思っていた母親と弟が居なくて首をかしげた。
今日、別に何処へ行くとか試合があるとは聞いていないはずで台所の方まで行くがいる気配は無い。

居間に戻り不思議がっている中でふと視界に入ったテーブルの違和感に視線を戻した。

近寄ってみれば紙とペンが置いてあり、紙を手にとって裏返す。
黒いマジックで大きく書かれた文字を見て現状を把握する。
メモ書きのように単調に書かれた置手紙にはただ「シュンちゃんと友達のところに行ってきます」の文字。
太く大きく書いて目立つようにしているくせに裏返して置いては意味が無いだろうと母親の顔を思い浮かべて息をつく。

『飯どうするかな』

料理など朝からする気がおきずにとりあえず出来合いのものでもないかと冷蔵庫を開けるが、見事に何も無い中身無言で閉めた。
面倒くささが空腹を上回り、食べなくてもいいだろうかと思い始める。

「・・・いっか・・・」
「・・ーべ―――――!!!」
「は?」

大きな声に何事かと思考を停止し、思わず辺りを見回す。
確実に其の声は自分を呼んでいたと確信づくまでの暫くの間の後に、確実な一つの仮説が浮かんだ。
同時に玄関のチャイムが3度鳴り、また大きな声で阿部の名を呼ぶので確信して慌てて玄関へと向かう。

サンダルを引っ掛けてドアノブに手を掛けるが鍵がかかっている事を忘れていた。
ガチリと途中で止まるノブから手を離し、鍵を開ける。
其の間にも呼ぶ声は止まない、近所迷惑だと慌てる中で「黙ってろ」とイラつく声を出しながら彼を出迎えた。

「何怒ってんの?」

玄関を開けて直ぐにキョトンとした田島の顔に眉を寄せ、手を伸ばして頬をつねる。

「うるさい、近所迷惑」
「いひゃいいひゃい!!」

バタバタ暴れる田島に面白さを見出したところで手を離す。
もう少しつねってやっても良いかと思ったが涙を溜めながら痛そうにするので其の考えは引っ込んだ。
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