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□恋人補給法
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少し広めの部屋の中、キッチンに立つ島崎の背中を阿部はじっと見詰めてる。
薄く開き気味の唇と、ゆっくりと瞬きをする大きなタレ目。穴が開く程とはこういう事だろうと、島崎は小さく苦笑する。そして、「隆也」と名前を呼びながら
振り返ろうとした瞬間、背中に軽い衝撃を受けた。腰に絡む腕に抱き着かれていると分かるも、阿部にしては珍しい行動に首を傾げる。そうしながらも、手はちゃっかりと阿部の腕に触れさせて。
「隆也?」
「・・・・・久々に逢ったから・・・」
小さな声で呟かれたのはまるで言い訳のようで、それを言いながら島崎の腹の前で絡まる両手の指を解くが、腕を掴んだ島崎の手が離れるのを許さない。
「・・・・から?」
優しく続きを促しながらも阿部の顔を見ようと首を捻ってみるも、見えるのは顔を背中に押し付けているせいで黒い髪だけ。
「・・・・・慎吾さんが、足らなくなりました・・・」
髪の隙間から見える耳は赤く染まり、小さな声は震えている。それを見た島崎は小さな笑みを零して些か強引に体の向きを変えて阿部をきつく抱き締める。
「オレにも隆也補給させてよ」
「えっ?」
ぱっと上がった顔は沢山の疑問ばかりを島崎に投げ掛け、言葉を理解し、自分の思っていた事がバレていたと解れば、阿部の顔は更に赤みを増す。
「それとも、慎吾サンは隆也を補給しちゃダメ?」
緩く首を傾げて顔を見詰めれば下を向いて左右に振られる頭。それを合図にする
ように、阿部を抱く島崎の腕の力が強くなる。
「好き。愛してるよ、隆也」
「・・・オレ、も。慎吾さんが好・・」
続けられる筈だった言葉は、島崎によって優しく唇を塞がれ途切れる。阿部は、ただ島崎の服を弱く握るしか出来なかった。