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□本気の恋を教えてくれたキミへ
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今日は久々に外に出る。
いや、普段引き篭もってるとかそういう意味じゃなくて…隆也と会うのに、出掛けるというのが久しぶりなだけ。いつもは大抵俺の家だから…。
というのも、今日は隆也の部活の練習が休みで、俺が会おうと誘ったら「買い物がしたい」と言う隆也の要望に応えたものだった。俺も受験生で勉強ばっかりの日々。買い物行くのも久しぶりだったし了承した。まあ、俺が隆也の言うことを断るのってないんだけど。
で、今こうして駅で隆也を待っているワケで。隆也を待たすのが嫌で待ち合わせの30分前から来ている俺は相当だと思う。今まで、女の子相手でもこう本気にはならなかったのに。
「あっれー?慎吾ー?」
「!?、や、ヤマちゃん…!?モトヤンも…」
「どーも。何してんの?」
…最悪な面子に出会ったと思う。何、今日って厄日?
「…待ち合わせ中。もー今日だけは勘弁してくれる?」
「えっ、何。慎吾また彼女できたのー?」
「でも慎吾から待ってるって珍しーよね。どんな子ー?」
素直に言って、早く撒きたかった。けどこの2人がおもしろそうなことをスルーするワケがなくて。
待ち合わせで俺が待つなんて、さっき言った通りまず無い。野球部メンバーで集まったとしても最後とはいかないものの後の方。
俺が待ってる、そういう状況に出くわしてこの2人が突っかかってこない…なんて甘すぎる。どうにかして誤魔化せないかと思考をフル活動してみても思いつかない。
さて、どうするべきか。
「そうなの。彼女とデートすんの、俺。だから邪魔しないでくれない?」
「「やーだ」」
…。ダメだこりゃ。
ヤマちゃんとモトヤンのコンビをどうにかしようっていうことから間違ってる気がする。そうだよな、和己ですら手ェ焼いてんだから。
隆也とのデート邪魔されんのは非常に嫌、だけど。俺には出来ない。この2人をどうにかするなんて…!
そんな俺を無視して、ヤマちゃんとモトヤンは「どんな子だろうねー」「ねー」と言って楽しんでいる。…コイツら…。
「慎吾さんっ、お待たせしましたっ…」
「隆也、」
俺が4組コンビに呆れていると、隆也が走ってきたらしく息を切らしている。…そんなに慌てなくてもいいのにと思いつつ、隆也が走ってきてくれたことに嬉しさを感じて思わず顔が緩む。ホント、可愛い。
「ちょっと慎吾!この子って西浦の捕手の子!?」
「えっ、意外ー!!」
何が。と言いたい。そんな俺を放っておいて4組コンビは隆也に質問攻め中だ。ほら、隆也困ってるじゃんか。2人のテンションにいきなりついていけるヤツがいるかっての!
「はいストップ。隆也困ってるでしょーが」
「「えー」」
「えーじゃない。どっか店1件だけなら付き合ってやっからそこで話せ。ここ駅だから」
とりあえず隆也を助けるために2人を引き離す。俺の提案に渋々ながら了承したらしい2人は早速どこ行くか決めている。ほんっとに行動速い。さっきの渋々って感じの表情どこやった。
俺もそんな2人を見失わないように(ここで撒くのも手だけど、絶対学校で何かされるから止めておく)2人について行こうとすると、クイッと服を引っ張られて。
「ありがとうございます」
そう言って少し安堵したように笑った隆也。そんな隆也に「どういたしまして」とだけ言って手を握る。人目を気にして焦る隆也に「人多いから大丈夫」と言うと、抵抗は無くなった。満更でもなかったってことかな、すっげー嬉しい。
適当に4組コンビを追っていると、2人は「ここー!」と言って近くのコーヒーショップに入っていった。
俺も隆也に「ごめんな」と謝りつつ、一緒にその店に入った。
適当に飲み物注文して(言うまでも無い、全て俺の奢りだ)、空いている席に座る。隆也の横だけはキープしておいた。流石にそこまで譲れるかっての。
「で、隆也くんだっけ?俺らのこと覚えてるー?」
「あ、はい。山ノ井さんと、本山さんですよね?」
「あったりー」
確か隆也はウチのデータを調べてあの試合に挑んでたんだもんな。レギュラーは知ってて当然、か。あの試合からそこまで経ってねえし。