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□三人目の心
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「なんだ、おまえらやることやってたわけね。」

へーっと意外そうな声を出す呂佳が座るのも難しいのか島崎に寄りかかりぐったりとしている阿部を盗み見る。

「しかもお盛んなわけだ。」

ニヤニヤとする笑みは島崎の勘に触ったが、此処で怒りに任せてしまったら彼の思う壺なのでは無いかとただ堪えた。
阿部は呂佳の言葉に顔を赤く染めるが、何も言わないで呂佳の視線から逃れるようにそっぽを向く。

よたり、とした阿部の姿に面白そうだと近づいた呂佳が阿部に手を伸ばそうとするのを島崎は阿部を抱きかかえ呂佳に背を向けて自分の体で隠すようにして守る。
チッと不満そうに舌打ちするが、それも一瞬の事でまた口元が笑みを浮かべた。

「・・・つーか、隆也に変な事教えないでください。」

何が起こっているのか少しも感じ取れて居ない阿部が、ピリピリとした空気に不安げな顔で島崎の肩口から様子を覗く、
この空気の原因が自分にあるのが解って口を出したかったが、声を出してはいけないのではと唇を噛締めた。

「へんなこと?」
「しらばっくれますか・・・」

呆れた、そんな表情を浮かべて島崎が一瞬目を逸らしたのを皮切りに、阿部にチラリと目線をやった呂佳がニヤリと笑って、近づき、顔を近づけても直ポカンとする阿部に口付けた。

「!?」

ビクンッと揺れる阿部の体で島崎が何事かと驚きながら、振り返る間にキスをしたまま背中を向けていた島崎を阿部ごと押し倒す。
島崎が突然の衝撃に驚いてバッと顔を上げ、阿部の身を案じたが彼の頭を抱えていたので強打した様子も無く、とりあえずほっと息をついた。

「んっ・・・くっ・・・」

しかし、それも少しの間で、舌を侵入させられて声を漏らす阿部が縋るように島崎の腕を掴んで来るのをハッとして阿部の頭の横に手をつき、両腕に力を込めて背中に居る呂佳を阿部と引き離す。

「ぁっはぁ・・・はぁ・・・」

口付けから開放された阿部が苦しそうに肩で息をするのを見て、島崎が息をつきながら複雑な気持ちで其れを見つめる。
ぼんやりとする阿部も島崎の其の視線に耐え切れず視線をツィと逸らした。

「まだお楽しみ中・・・」
「・・・・・呂佳さん・・・」

ただ一人不満を漏らす呂佳へ向けて、島崎が怒気を含んだ言葉向ける。
呂佳は諦めてはぁ、と息をついた。

ため息をつきたいのはこっちの方だと眉を寄せる島崎だが、全体重をかけてくる呂佳の重さに腕は震えていて、辛そうに歪むのを、バツの悪そうな表情の阿部が見て不安げに瞬きを繰り返す。

「じゃ、おまえでいいや。」
「は!?」

阿部を少しでも安心させようとして笑顔を作る途中、耳元で突然囁かれた言葉にドキリとしながら服の中に侵入する呂佳の手に、驚いた声を出した。
今の体勢では禄に抵抗も出来ない上に、恋人の前で何かとんでもない事をされるのではと島崎はサッと青くなる。

「ちょ、ちょ・・・っと!やめっ・・・」

冷たい手が肌をまさぐるのに反応して言いかけた声が詰まった。
歯を食い縛って耐えるその目線の先には阿部が驚いて唖然とした表情を向けて見ていて、
彼が目の前にいる事で何となく積極的に手を伸ばして攻めてきているように一瞬感じたわけだが、このシチュエーションはないだろ!と心の中で突っ込みながら首を振った。

こんなに彼の手はゴツく無いし大きくも無いと強く思い、
それでも素肌を這う指の感覚にビクリとする。
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