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□君のための電話線
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それでも、言わなければこんな深夜に電話したことが無駄になってしまう。
「・・・っ、あのっ」
「うん?」
彼特有のおっとりとした声色に心なしか助けられながら、奥歯を噛み締めて。
とりあえずこのままでは言えなそうなので、不本意だが逃げ道を作っておこうと口を開いた。
「一言、一言だけ言ったら電話切って良いですか・・・?」
「ん?うん、どうしたの?」
変なの。と向こう側で首をかしげているのがわかる。
ただこうしておくしか、今考えられる術ではこれが精一杯で、失礼なのを承知して先に了承をとっておいた。
もう一度息を吸って吐いて、告白じゃないんだからもっと手早く済ませようと自分の気持ちが背を押したのがわかる。
『・・・そうだよな、これじゃまるで告白だ。』
そうではないのに、こんな事にいっぱいいっぱいだと自嘲して、それだけ好きなのだと思うと更に恥かしかった。
「・・・・誕生日っおめでとうございますっ」
ほぼ勢いに任せて口を開いて、ブツリと通話を切る。
倒れるようにベッドに身を沈めて枕に顔を埋めた。
息が荒い、恥ずかしくってたまらない。
コレだけを言う為になぜこんなに照れてしまうんだと眉を寄せる。
思い起こせば「恋人として」なんてコレが初めてで、電話するのも初めてで初めてが重なってこんなにも緊張しているのかもしれない。
他の人に言う時とは明らかに違う言葉の重さに、先ほどの行為を思い出し体がうずうずして足をバタつかせた。
「・・・。」
てっきり直ぐに電話が返ってくると思ったが意外と鳴らないソレにチラリと目をやる。
電話があればあったで如何するか迷うのだろうけど、ないならないで不安なのだ。
『おこらせた、・・・とか。』
最悪でも怒らせることないと思うが、随分と勝手なことをしてしまったのは事実だ。
息を呑んで携帯へ手を伸ばす。
指先が触れたところでランプが光ってブルブルと携帯が震え出した。
「!」
振動は直ぐに切れてしまったが、その短さにメールだと気がついて驚きつつも慌ててディスプレイを開ける。