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□君の温度
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あれからちゃんとリビングに移動して、今はフローリングに敷いてあるカーペットの上に座っている。
10月はもう、少し肌寒く感じるようになってきているので、ホットの紅茶を淹れた。
「ありがとうございます」
「お礼とかいいから。隆也が来てくれたことが嬉しいし?」
「お、俺は…
慎吾さんに、会いたかっただけ、です…」
言っているうちに恥ずかしくなってきたのか、隆也は俺の胸に顔を埋めてきた。…煽ってるって、気付いてないのかなあ、本当に。
でも、隆也がここまで寄り添って来るのは珍しい。甘え下手なのか、いつも恥ずかしそうにして目線を逸らして顔を赤くしていることが多い。なのに、今日は。
「…ずっと会ってなかったんですから、これくらい、いいでしょ…っ」
俺だって、甘えたいんです。
慎吾さんを、もっと感じたいんです。
考え、読まれてんのか…。
今度は、ギュウッと抱きしめられる。
いつになく積極的な隆也に少し驚きながらも、俺も腕を回して応える。
「俺も、同じだから」
隆也に、会いたかった。
だから、
「もっと、甘えて?」
我ながら、こんなに優しい声出せるのかと感心した。これも、隆也だけなんだろうけど。
「…お言葉に、甘えて」
ボソリと、呟いた。それは小さな声だったけれど、俺には充分聞こえる声で。
それから何をするでもなく、ただお互いに、お互いを感じていた。
隆也のあたたかさが自分の中に溶け込んでいく、そんな感じ。
ああ、幸せだなって思える。
それは隆也も同じようで、俺の背中に回された腕はずっとそのままで。時折俺が頭を撫でると、嬉しそうに微笑んでいた。
「ん…っ」
いつの間にか、寝てしまっていたようだ。外は既に少し暗くなり始めている。冬が近付いている今、日が沈むのは大分早くなっている。
「やべっ…隆也、親に連絡とかしてねぇよな…」
まさかこんな時間までいるとは思わず(いや、嬉しいけど!)、ふと彼の方を見るとまだ寝ていた。
とりあえず起きよう、
そう思い、身を起こすと。
「ゃ…」
「隆也?」
少し反応があったので起きたのかと思ったが、彼の目は閉じられたまま。そういえば、まだ抱きしめられている。そのまま、寝てしまったのか。
その腕に、力が入った。
「ぃ、や…はなれ、ないで…」
無意識なソレ。
夢でも見ているのだろうか?
ぎゅうと腕の力は緩まないままで。
「…」
まあ、いいか。
正直、今日は帰したくない。
隆也の両親には悪いけど。
もう少し、このままで。
甘えてくれている君を、感じていたい。
起きたら、何をしようか。
今日は泊まってと頼もうか。
お互い、それを望んでいるだろう?
とりあえず、今は。
君の温度を感じて。
このまま、二人で。
二人きりの空間を楽しめばいい。
そう、素直に思った。