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□大切な想いと想い人
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しばらくして涙がかれたようにぴたりと止まった隆也は目元を赤くしながらそろそろと俺の前へ移動してきた。
目の前に座って申し訳なさそうにしているのは俺の服がびっしょりと塗れてしまったからだとおもう・・。
自分の服をぎゅうっと手がほんのり白くなるほどに握っていた。彼の手にそっと触れてその手を解いてやれば切なそうな声が鳴って、かわいいなといつもながらに思う。

「・・・・高瀬さんは」

手をぎゅうと握り返されて隆也の顔を見れば綺麗な雫が彼の頬を伝ってぽたりと落ちた。
目の前で彼が泣くのを始めてみて格好悪くも動揺してしまい隆也の両目を開いていた俺の手で隠すように当てた。
隆也はくすりと笑ってその手をゆっくり優しく掴んで自分の目から離す。

「高瀬さんは、俺の・・・」

また気になるところで止まって少し気落ちしながらもじっと隆也の目から落ちる涙を見ながら答えを待った。
初めて見る其れに
こんなに綺麗に泣く子だったんだと思って、もっと早くに見たかったと後悔しそうになったが、見なかったことが今につながっている気がしてやめる。

「・・・・た、」
「・・・・・・・た?」
「た・・・・・いせつなひとっ」

少し急かしたが問題は無いようで言われた言葉に胸が高鳴った。
どきどきと大きく鳴り響く心臓が止まらない、止まったら困るけども・・・。
顔を赤く染めて涙を流す姿は綺麗で、本当に美人で可愛いと思う。

「だ、だから たかせさんは おれの、・・・ちからに、」

「なってます。ちからに なってます。だから」

「ありがとう・・・ございます。」

多少の戸惑いを入れながら恥ずかしそうに言う言葉がいつもの彼からは想像も出来ないほどで、思わず抱きしめたその腕の中で俺より温かい体温にほっとする。
いつも泣いて触れる瞬間氷のように冷たくて吃驚するから。
隆也が腕の中でごそごそと動きながら心臓付近に耳を当ててくる。

「・・・高瀬さんの心臓の音」

これさっきも言ってたな、と思い出して声に耳を傾けた。

「好き・・・」

目をゆっくりつぶっていつの間にか流れていた涙が、跡だけ残して消えていて、彼が眠ったことを閉じた瞳と規則正しい呼吸が教えてくれた。
心臓はいまだなり続けて止まらず。
彼のお願いは続くのだろうと思ったが、人は、というか俺は割と強欲だから、力になれているならせめてもう少し、彼を癒せる存在になれればと更に高い望みを想った。
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