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□隠された満月
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昼に示し合わせたわけでもなくばったりと出会った。
何の理由も無くただブラブラしていたのは彼も同じ、
運命なんて恥ずかしいことを思ったことは秘密にして、折角だからこのまま遊ぼうかという話になった。
特にやることも無くファミレスで時間をつぶすだけでも一緒に居る時間はあっという間に過ぎるもので、
俺も彼もソレをよく知っていた。
そう混んでいないファミレスの、窓の外もよく見えないような4人席、一人一つずつ二人がけのソファを独占して寛いでいる。
少しだけ見える窓の色が黒く、内側を反射して写しているのを見てふと時間が気になった。
「あー、もうこんな時間だ」
時計等持っていないから周りを見渡したが、いまいち場所がわからず持っていた携帯を開いて時間を確認する。
目の前に座る隆也はそれを見ながら、いとも簡単にファミレスに設置された時計を見つけ、曖昧に頷いた。
まるで時間を認めたくないとでもいうような、そんな濁したような声でテーブルに突っ伏す。
「…」
「…」
なんだか思わせぶりな態度だと無言の中思いながら、コップの底に残ったコーラを飲み干し、やんわりと笑いかけた。
ずっとここに居るのもいいが、それでは彼自身が困ってしまうだろう。
寮暮らしの自分は安易に泊まっていくかとは聞きだせず、ソレで歯がゆい思い等数え切れないぐらいした。
今なんて正にそうだ。
こんな時一人暮らしがとてもうらやましいと思う。
隆也はチラリと確かめるようにこちらを見た。
困ったような残念そうな表情をすると席を立ち、席の隣に置いていた鞄を手に取り肩にかける。
「行きましょうか」
「ん。」
コトリとコップを置く音がする。
二人がけのソファから這い出るようにズルズルと身を引きずり、テーブルに手をかけながら抜け出した。
一足先に抜け出た彼は、その様子を見ながら二歩ほど先で待つ。
それがなんとなく嬉しくて横をすり抜ける際に彼の頭をそっとなでた。
「おごる」
戸惑い気味に振り返った彼だったが何も言わず、俺はそのままレジに向かった。
彼はしばらく隣に居たが、会計が終わる間際になると一足先に外へ出ていく。
『どうせなら待ってればいいのに』
思うが、彼の本質を知っているために口には出さない。
これは憶測だが、きっと寂しいながらに照れているのだろう、少し自意識過剰だろうかとも思うがそうでもないような気がする。