◆幻novel◆

□星の船
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しとしと…
どころか、バケツをひっくり返した様な雨が降る外の景色を、自室の窓辺で頬杖をつき、ティルはジッと見つめていた。

今日はリオウからの頼まれ事で同盟軍まで出向く予定だったが、この雨では外出は無理だろう。

無理に向かったとしても、バナーの村からラダドまでは船で渡して貰う必要がある。

この雨で川も増水しているに違いない。
船で出るなど、自殺行為だ。

「はぁ〜…」

何をするでもなく、朝からずっと同じ様子で雨を見ていた。
思うことはただ一つ。

「久しぶりに会えるハズだったのになぁ…」

本拠地に居る愛しい人の顔が浮かぶ。

彼から会いに来る事は滅多に無く、ティルの方が用事を見付けては通っていたが、ここ最近は特にそれらしい用が無く、本拠地を訪問していなかった。
もう随分と会っていない。

「あ、今日って…」

何気なく壁の暦を見て、呟いた。
7月7日。
一年に一度、逢う事を許された牽牛織女の逢瀬の日。
この日、二人は間を隔てる川を船で乗り越える。

ただ、雨が降ると川が増水し、船が出せないため、逢うことが出来ないという。

「まさに今の僕達と同じだー…」

鵲が橋を架けてくれる…という話もあるが、あいにく現実では不可能だ。

別に今日行けなくたって、次に向かえるのが一年後の今日しかない、という訳ではない。
雨が止み、川の水が引けばいつだって会いに行ける。

しかし、今日と思っていたティルにとっては、それまでの時間が一年後と同じ位に永い。

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