◆幻novel◆
□見つめる先に
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「さてと…じゃあ、そろそろ帰ろうかな」
そう言ったのは、緑のバンダナに赤い中国風の服を着た少年。
三年前の解放戦争ではリーダーとなり、皆を導いた。
「…あ、遅くまですいませんでした」
既に日の沈みかけた茜空を見て、現在起こっているデュナン統一戦争を指揮する少年、リオウが申し訳なさそうに言った。
バナーの村で偶然出会って以来、かつて自分と同じ立場だった彼に色々と話を聞いてもらったりしていた。
「いや、いーよ」
気軽に手をヒラヒラさせ、笑顔で答える。
「これだけ大勢の人達のリーダーなんだし…大変な事もあると思うからさ。僕も昔そうだったからよく分かるんだ。…だから、いつでも呼んでよ、力になるから」
「はい!」
先輩の力強い言葉にリオウも笑顔で返事をした。
「…でも、そろそろ暗くなりそうですよ?一人では危険じゃないかな…」
本拠地であるこの城からグレッグミンスターに帰るまでには、まずラダドの街まで行き、そこから船でバナーの村に着いた後…さらに深い森を抜けて行かなければならない。
その森にはモンスターも出る。
ティルの強さを疑いはしないが、やはり一人きりでは危ない気がした。
「んー?それなら大丈夫」
リオウの心配をよそに、ティルは呑気にテクテクと歩いていく。
向かった先は
「はァ!?グレッグミンスターまで送れ?」
石版の前で腕組みしたルックは不機嫌な様子だ。
ティルは構わず頼む。
「そ、テレポートいっちょヨロシク」
「そんな事はビッキーに頼んでよね、めんどくさい」
間髪入れずに来た返事に、ティルはフッと遠い眼差しになる。
ついでに影も背負ってドンヨリとした。
「前に頼んだ事はあったよ…でも、着いた所はなぜかソニエール監獄の地下牢…しかも最下層………家に帰るまで散々だったりして……ね…」
その時の事を思い出したのか、しまいには「あの時は…」などとブツブツ呟きだす。
「…ルック…」
「………わかったよ!」
執り成すようにリオウに言われ、不承不承に引き受けた。
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