◆灰novel◆

□*Happy Birthday!?*
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*Happy Birthday!?*


「ねぇ、神田見なかった?」

近頃の空模様は雨が多いのだが、その日は珍しく快晴に恵まれ、温かな陽気が気持ちのいい天気だった。

朝から妙にソワソワしているリナリーが、食堂にいたアレンに声を掛けた。
彼女は、何やら大きな袋を大事そうに抱えている。

「いいえ?見てませんけど…」

それを聞くと、シュンとうなだれてしまった。
悲しそうに瞳を伏せ、ポツリと呟く。

「…今日は、まだ一度も顔見てないの。いつもは違うのに…わたし避けられてるのかしら…?」

「任務ではないんですか?」

「入ってないわ、だって今日は…」

「あっ!アレン、リナリー!ユウ見なかった?」

リナリーが言い終わらぬうちに、割り込んできたラビがテーブルに手をついた。
走り回っていたのか、だいぶ息が上がっている。

「見てません。二人共、なにか急ぎの用なんですか?」

怪訝な顔で問うアレンに、ラビとリナリーは顔を見合わせた。

「知らないの?アレン君」

‥‥‥

その頃…神田は、普段は殆ど人の来ない書室にコソリと隠れていた。
床に座り、恨めしそうに余った服の袖を見る。
足元も裾が余り、ブーツも大きすぎて脱げる為、今は裸足だ。

すっかり子供サイズになってしまった原因…事の起こりは早朝。
呼び出されて行った指令室にて、満面の笑みでコムイが差し出した茶にあった。

「今日って神田くんの誕生日でしょ?コレはボクからのプレゼントだよ★秘境から取り寄せた高級なお茶なんだ〜!飲んでみて!!」

そう言うが、湯飲みの中の液体は明らかにお茶とは違う、形容しがたい色をしていた。

「…………いらね」

引き攣りながら、踵を返し部屋に戻ろうとしたのだが…

「そう遠慮せずに〜!ネッ★」

ピョーンと前に回り込んだコムイは、問答無用に絶妙のタイミングで神田の口元へ湯飲みを押し当てた。

うっかり一口飲んでしまい、気付いた時には既に体は縮んでいたのだ。

「あっれ〜…オカシイな。元気百倍になる滋養茶のつもりだったのに。調合間違ったかなぁ…」

ア然とする子神田を残し、そそくさと立ち去ってしまった。

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