◆灰novel◆
□Happy Wedding!
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海沿いにある小さな町。
普段は礼拝に訪れる者が疎らにいるだけの小さな教会に、今日は多くの人が集まっていた。
皆一様に微笑み、祭壇前の二人を見守っている。
そこにいるのは、純白のタキシードとウェディングドレスに身を包む今日の主役。
幼馴染みで常に共にいたくせに、なかなか一緒にならないと周囲をヤキモキさせていたラビとユウだ。
一時期、ユウは外から来た見知らぬ白い若者と付き合っていた。
ラビの落ち込み様は酷いものだったが、その白い若者はある時急に姿を消した。
悲しむユウを放っておけず…でも、心の隙間に入り込む事もしたくはなく…ラビは自分の気持ちは押し殺し、ただ友人として…ひたすら傍に寄り添い続けた。
いつしか、ユウもラビを愛する相手として意識するようになり、幼い頃からの永い時を経てようやく人生のパートナーとして第一歩を踏み出すのだ。
「誓いの口付けを」
神父の言葉にラビは花嫁のベールを上げた。
幸せそうに微笑み、視線を合わせる。
ゆっくりと顔を近づけ、もう少しで触れるという時
「待って下さい!!」
凄まじい音で扉を開き乱入してきた人物が叫んだ。
その場に居た者全員が、何事かと開け放たれた扉に立つ人を見た。
「…アレン?」
ユウは他の誰よりも先に気付いた。
自分を置いて、何も言わずに行方をくらましたかつての恋人に
アレンは驚く人々の間をツカツカと進み、祭壇前のユウの手を掴むとグイッと引いた。
そのまま来た道を引き返して行く。
「ユウ!」
我に返ったラビは慌て呼んだが、ユウは困惑した表情でいるものの…アレンの手を振りほどいたり立ち止まったりせず、引かれるままに進んでいく。
そうして花嫁を連れた乱入者は教会を出て行った。
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