◆幻novel◆
□見つめる先に
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「おー!今日は月が綺麗だなぁ〜」
寄ってくれと言われたバナーの村。
夜の帳がおり、辺りは薄闇に包まれている。
池のほとりの桟橋に立ち、ティルは明るい月を見上げた。
「ココになんの用があるの。忘れ物でもしてた?」
「いーや、なんとなく」
「なにソレ。いーから早くグレッグミンスターに……っていうか、大体ぼくが一緒に行く必要無いよね」
「まぁまぁ」
桟橋の端に腰掛け、横にあけたスペースを手でぽんぽん叩く。
「たまにはノンビリ行こうと思ってさ。ホラ」
隣においで、という事だろう。
ルックは暫く黙って立っていたが、やがてストンと片膝を抱え座った。
「アンタって変わんないね」
「それは褒めてくれてる?」
「成長してないって言ってんの」
「え…失礼だなっあれから三年だし、少しは成長してると思うぞ!たとえば………そう…アレだ……えーと………」
心外だと抗議したものの、これといって何も思い浮かばずワタワタしていたが、フト隣に座るルックを見て
「…ルックも変わらないな」
途端にムッとした表情で睨まれた。
「ぼくのどこが…―」
「いや、そういう意味じゃなくて」
彼が言った“成長してない”という意味にとられたらしく、ティルは慌てて続けた。
「なんて言うか…目の前で起こっている事を見ているようで…でも、実はもっと別の…遠い所を見つめてるよーな……そんな感じが変わらないなって」
「ワケ分からないよ」
呆れて返されてしまったティルは苦笑した。
「分からないかなー。側に居るのに居ないみたいなこのカンジ」
「さぁ」
「遠い何処かばっかじゃなくてさ、たまにはコッチも見てほしいんだけど?」
おどけて言うが、ルックの反応は無い。視線は下を向き何か考えているようだった。
やがてポツリと呟く。
「…ティル」
「んー?」
「それ。『生と死を司る紋章』ソウルイーター…」
ティルの手元へ視線が移った。
「その紋章を持ってから…何か変わった事ある?」
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