RKRN二次創作 戦雲の月、その影を
□時は流れるの段
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――卒業したら、みんなどうすんだ?
膨らんだ、梅のつぼみ。その下でそんな声が聞こえた。いつもの威勢の良い声とは違う、どこか影のある、落ち着いたもの。
若干の冷たさの残る春風が、それを聞く文次郎の頬をなでた。
――俺は城忍に内定してる。ゼンマイ城ってな、貧しい城だけど、実家から近いんだ。
ふと目を動かすと、そこにはくすんだ緑色の忍び装束を着た五人の少年達がいた。
先に答えたのは、精悍な顔つきに、生来の面倒見の良さがにじみ出る忍者のたまご。
まぎれもなく、五年前の食満留三郎であった。
その後も、それぞれが進路について口にする。留三郎のように城に就職した者、どこにも属さず忍者をする者、そして家業を継ぐと言った者。
――僕も城に就職したよ。
茶髪の、人の良さそうな少年が言うと、全員が慌てて首を振った。
口々に、無理だ、やめとけ、などと何とか引き止めようとしている。
当の本人は、少し困ったように頬をかいていた。
――伊作は薬屋とか向いてると思うけどな。ところで、文次郎、お前はどうするんだ?
突然、話を振られた。
留三郎だった。
早春の柔らかな日差しの中。
いつも喧嘩ばかりしているが、やはり気になっていたのだろう。その表情は、少し影を落としていた。
――俺は。
口を開くと、まばゆい光が視界を遮った。
その中に、かつて共に学び、笑い合った仲間たちは消えていく。叫んでも、何も変わらない。光の中を、走馬灯のように様々な人が通り過ぎていく。
四十代程の男が出てきた。一瞬だけ。そして何もなかったかのように消えてしまった。
文次郎は、叫んだ。光の中、自分の声だけが反響する。
まだ若い女性もいた気がする。だが、手をいくら伸ばそうとも、そこには誰もいない。
顔を覆い、地面にへたり込む文次郎。いつの間にか、脇腹の傷が痛む。
光だけの世界。
そんな文次郎の肩を、誰かが叩いた。といっても、力は強くない。
顔を上げ、振り返る。
そこには、十歳程の少年。笑顔で手を差し伸べていた。
「若……」
文次郎は震える手で手を伸ばす。指先が触れる。
そこで、急に世界が変わった。