RKRN二次創作 戦雲の月、その影を
□時は流れるの段
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食満留三郎は、暗い森を走り続けた。
どうやら、誰も追って来る者はいないらしい。
安堵のため息が、思わず漏れた。
フクロウの声が耳に入る。
木の枝を蹴り、次の枝へ、先へ先へと走り続け、何時しか小さな小川に出た。
鼻まで覆っていた覆面を取る。
森の、大樹の間を縫って流れていくその水を、留三郎は両手で掬い、口に含んだ。
相当水に飢えていたのだろう。
それから何杯も何杯も飲み干した。
「でかくなってたな、しんべえ。てことは、喜三太も、ナメクジと一緒に、平太はまだ臆病治ってないかな」
月を見上げ、忍術学園の後輩達へと思いを馳せるその表情は柔らかい。
懐かしい学園の日々が、一つ一つ月に輝く小川に映っては流れていく。
柔らかかった表情が、不意に、くしゃくしゃに歪んだ。
再び、両手で水を掬う。
そして、そのまま顔に投げつけた。何度も、何度も、何度も。
立ち上がる頃には、まるで大泣きしたかのようにぐしゃぐしゃになっていた。