RKRN二次創作 戦雲の月、その影を
□序
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RKRN二次創作 戦雲の月、その影を
序
暗闇が支配する。月明かりも満足に差し込まぬ、深い森。
そこを、音もなく駆けていく影があった。風を切って、風を切って、ひたすらに進む。
音もなく、というのも、その路は、木の葉が一面に敷かれた地面ではなく、広く複雑に腕を伸ばしている、木々の太い枝であったからだ。
荒い息だけ、聞こえた。影が去った後は、風に乗って水が木の葉の上へと落ちていく。
否、その錆びた鉄のような臭いは、まぎれもなく、血液であった。
パキ、と小枝を踏む乾いた音がした。森が開け、走っていた影は地面へと降り立ち、空を見上げて立ち止まった。
分厚い雲で、月はすっかり隠れている。
激しい息づかいの中、影は黒一色の装束の上から脇腹を押さえた。ぽたぽたと、その手を滴って生命が抜けていくのを感じる。
「もう逃げないのか?」
真上からの冷めた声に、影は振り返った。と同時に木から離れて間合いを取る。脇腹を押さえるのをやめ、代わりにクナイを握った。
突きを覆っていた雲が、徐々にその姿を表す。
「潮江文次郎、フキノトウ城忍組頭にして、元忍術学園六年い組、地獄の会計委員会委員長とあろう者が」