黒子のバスケ
□未来の話をしよう
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※社会人設定
※キャラクターバイブルのifの設定
好きだよ。
私がそう紡いだ言葉に彼が応えてくれたのは、高校1年のある日の放課後。
それから恋人同士という関係は、今に至るまで変わらず続いている。
保育士になる為に彼は児童福祉の学科がある大学へ進学。
私は私で何か勉強がしたいと、彼と同じ大学にある心理学部へと進学した。
先週、卒業式が終わり、私とテツヤはめでたく新卒の社会人となった。
お互いに就職先は既に決定し、春から新しく始まる生活の準備をしようという所だった。
『あぁ、そういえば私引っ越そうと思って。』
休日に、テツヤと一緒に必要となるものを一緒に買いに行っていた時のこと。
私はテツヤが選んだ物を買い物カゴに仕舞いながらそう彼に言った。
「え、引っ越すってどこへ?」
『うーん…勤務先が近いところかなぁ。まだ具体的には決めてないんだけどね。』
テツヤは元々、高校を出た後一人暮らしを始めていたため、引っ越す必要がない。
しかし私は生活力があまりない事や金銭的なこともあり、実家から大学へ通っていた。
『バイトして貯めたお金もかなりの金額になったし。しばらくは何とかなると思うよ。』
「……。」
テツヤは下の方にある商品を見ていたため、表情こそ分からなかったが、何か考えているようだった。
そして急に立ち上がり、私の手からカゴを受け取るとさっさと会計を済ませてしまった。
良く分からずに突っ立っていると、テツヤは「行きますよ。」と行って私の手を引き、店の外へと出て行った。
『テツヤ?どうしたの?』
テツヤは彼が運転する車の助手席に、私が乗ったのを確認するとすぐにエンジンをかけて帰路を辿った。
テツヤは私の声に答える事はなく、そのまま彼の家までひたすらラジオが流れていた。
パーソナリティの笑い声が嫌に乾いて聞こえて、いつもはすぐに感じてしまう帰り道が延々と続くような気がした。
彼のマンションに着くと、彼は「降りて。」と言い後部座席から荷物を取り出した。
彼は荷物も持ってエントランスに行き、慣れた手つきで開錠し、私を一瞬チラリと見て歩き出した。
こんなことは今までになかった。
雰囲気的に彼は怒っていないだろう。
しかし、いつもと違う彼の雰囲気に気圧されてしまっているのは確かだ。
彼の部屋に着くまでの沈黙がまた痛かった。
部屋に入ると、彼は私をソファに座らせ、彼も私の隣に座った。
彼はやはり少し俯いていて、表情がよく分からなかった。
『どうしたの…?』
そう聞くと、彼は私の方を見て少し戸惑いがちに笑った。
「いきなり、すみませんでした。」
そう謝って、彼は私を抱き寄せる。
細く見えるテツヤだが、力はちゃんと男の人のもので、腕も私なんかより逞しかった。
「…なまえ。一緒に、住みませんか?」
『へ…?』
唐突に紡がれたその言葉は、遠慮がちに、でもはっきりと私の耳に届く。
「本当は、もう少し落ち着いてからにしようと思ってたんです。でも、なまえが一人暮らしをするのなら。」
テツヤは少し私の体から離れて、私の額に自分の額をくっつけた。
「なまえ。僕は、君に出会えて本当に良かった。」
彼はそう言って、私の瞼に唇を落とす。
そして、微笑んで言った。
「僕の、お嫁さんになってくれますか?」
優しく微笑んで、照れくさそうに言った。
もちろん、答えなんて決まっている。
私が笑って頷くと、テツヤは赤くなった顔を隠すように私の視界を暗くした。
これからもたくさん、一緒にいる“未来”の話をしよう。
「ベッドはダブルですかね。」
『そのままでもいいんじゃない?』
「なまえの親さんにはなんて言いましょうか。」
『“娘さんを僕にください。”言われてみたい。』
「子どもはやっぱり女の子でしょうか。」
『気が早いよ。ちなみに私は男の子がいい。火神君あたりにバスケ教えてもらってこい!って言いたい。』
「そうですか?僕だって教えられます。」
『だって女の子だったら、お嫁に行くとき大変そう。』
「…。」
『親バカ決定だね。』
「お互い様です。」