黒子のバスケ
□ディスパイス2
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彼の目が、言っていた。
“ごみ捨てに行って、そこで待っていろ。”
私は焼却炉へごみを投げ入れて、疲れきった腕を労おうと、近くの花壇に座り込んだ。
さっきの告白はどうなったのだろうか。
彼女は笑顔になれたのだろうか。
ふと、俯いていた視界に影が入り誰かが近づいてきた事を教えてくれた。
顔を上げると、そこには待っていろと言った彼がいた。
「よく通じたな。」
彼はそういって私の隣に腰を下ろす。
『間違ってなかったみたいだね。』
そういって彼の顔を見ると、ちょっと驚いたような顔をして笑っていた。
『さっきのあの子、どうしたの?』
「“ごめん。俺、君の事よく知らない…だから、そんな俺と付き合っても…俺には言う事なんてないけど、君のとっていい事なんてないよ。”」
『“でも、付き合っていく中でお互いを知っていければ、私はそれでいいよ!”』
「“中途半端な気持ちで、君みたいな素敵な女性とは付き合えない。…ごめん。君の気持ちには……答えられない。好きになってくれてありがとう。”」
『“花宮君……。”』
「…すげーなお前。一語一句違ってねぇぞ。」
『ははっ。伊達に人を見てきたわけじゃないから。』
私がそう乾いた声で笑うと、彼はなぜか不思議そうな顔をした。
「ふはっ…変な奴だな。お前。」
『何が?』
「俺やお前みたいなタイプって、自分自身が一つあるはずなんだよ。」
『……私にはそれがないと?』
「あるんだろうけどな。俺には見えてない。」
『あ、そ。』
それから、どれ位経っただろう。
時間的にはほんの十数秒程度だったが、何時間も経ったような感覚に陥った。
『私、そろそろ教室戻らないと。花宮、部活は?』
「今日は体育館の点検だとよ。」
『外周してこればいいのに。』
「やだよめんどくせー。」
花宮も、こんな風に喋るんだ。
いや、分かってたんだけどね。
彼の本性に気づいたのは、席が隣になった古橋君からの情報。
「あいつ、超猫被りだから。」
薄々感づいてはいたのだけれど。
『花宮は、私と違って本性を知ってる人がいるじゃん。』
「は?」
『私にはいない。だから、自分がどんなんかも分かんないよ。』
それだけ言って、立ち去るつもりだった。
しかし、それは私の意志以外の力によって阻まれた。
「……俺が、探してやるよ。」
掴まれた腕が熱い。
もう、季節は初秋だというのにじわりと額に滲む汗は頬を伝い、
私の涙と一緒になって流れていった。
嫌悪も同情も軽蔑も
『じゃあ、全部壊して見せて。』