黒子のバスケ

□ディスパイス
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「おはよ!なまえ!」

『おはよう。今日の髪型も可愛いね。』


吐き気がするほど、自分は嘘つきだと思う。


『そういえば、昨日言ってた俳優さんのドラマ見て見たよ。かっこいいね。』

「でしょ!?なまえなら分かってくれると思ったぁ!」


どうせアンタは面食いだから、イケメンなら誰でもいいんでしょ?


「あ、この曲ね!私の好きなアイドルの曲なんだよ!聴いてみて!」

『うん。帰ったら調べて聴いてみるよ。』


ただの話題合わせって、気づかないなんて、ホント


『(可哀想なくらい、馬鹿だよな。)』



私の性根は、両親の度重なる転勤により腐って行った。

転校して、友達ができたと思ったらまた転校。

そうなると、自分がどの立場でどんな転校生だったら気に入られるのか。

理解せずとも身についてしまった。


おかげで、現在高校2年生の私は



所謂“八方美人”という立ち位置にいる。

とはいっても、私はその人それぞれに肯定するわけでもない。かといって否定もしない。

たとえば、


「ねぇ、あの子っていっつも男子に媚売ってない?」


という、いかにも尻軽女が言いそうな事を言ってくる友人(仮)に対して私は


『うーん…私はそういうのよく分からないけど、人との関わり方ってそれぞれじゃない?彼女はああいう付き合い方なんだと思うよ。私達が一々目くじら立てなくてもいいよ。』


と返す。コレに対して大抵の友人(仮)は


「あーなるほどねー。ま、どーせあんなやつ。女の友人いないだけなんだろうけどねー。」


と言い話題を変える。

これがAの場合。Bの場合の友人(仮)だと、


「えーでもさぁ、アイツすっごいむかつかない?なまえもそう思うよね!」


と、同意を求めてくる。

そんな時は


『うーん……でもやっぱよく分かんないや。私ってホント、人を見る目がないから……。』


自分を貶す。


コレでオールオッケー。

これでも通じない相手には自分から近づかない・話さない。


そんな、素晴らしい生き様を貫いてきた私にとって、




「ふはっ。相変わらずだな。みょうじ。」

『…アンタもね。花宮。』


こいつの存在は計算外だった。







花宮真。常に成績トップで教師からの反応も良く、クラスでは委員長、バスケ部では主将を務めていて


「おっと……大丈夫?」


なおかつ超紳士。

でもあれは、結局


「(あーだり…)」


猫被り。


『(あーだり…とか思ってるんだろうな。)』










「ねぇなまえ!今日見たいドラマがあって、録画するの忘れちゃったんだよね。それでさ…。」

『掃除当番。代わるよ?』

「さすがなまえ!ほんとありがとう!今度なまえが当番の時は代わるから!」


そういって代わってくれた例はないんだけれども。


友人(仮)の掃除当番の班は、運悪く皆様運動部で、「ごめんみょうじー。」「ごめんねなまえー。」と出て行った。



『(私も今日は早く帰って寝ようと思ってたのに……。)』


昨日の夜は、友人(仮2)の委員会の仕事を手伝うために只管書類整理していた。

おかげで、眠い。



ほうきで一通り掃き、花瓶の水を入れ替えて棚の中を整理する。

外は真っ赤になっていて、教室に一人いる私は悲しいなぁなんて思いながら雑巾がけをしていた手を止めた。


ごみを捨てに行こうと廊下を歩いていたとき、偶然見てしまった。


「すきです……花宮君……!」


わお。あいつってやっぱモテるんだ。



そんな事を思って一瞬足を止めてしまったのが間違いだったのだろう。


花宮と、目が合った。











To be continued......


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