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□君の姿を
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(黒子目線です。)


真夏日が続くある日。
劈くような蝉の音が轟いている中、


「あ…。」


今日はある人に会うために墓地に来ていた。

僕らと一緒に過ごした、彼女の姿を探して。


「…テツ…。」


去年の夏、僕らのマネージャーであった名前さんが亡くなった。

事故だった。


「青峰君…。」

「…やっぱり、来るよな。」

「そうですね…。桃井さんは…?」

「また今度、一人で来るってよ。」


泣いちまうんじゃないかって、思ってるんだろ。


青峰君はそう言って苦笑いした。


「…黒子、青峰…。」


聞きなれた低い声のほうを見ると、緑間君がいた。

今にも、泣いてしまいそうな、そんな顔だった。


「早いですよね。もう、1年ですよ。」

「そーだな…。」

「…一瞬だった。こいつが、いなくなってしまうまで…。」


彼女がバスケ部のマネージャーとして入部したのは、2年生になったばかりの時。
桃井さんが連れてきた。

彼女は、恥ずかしそうに顔を赤らめながら自己紹介をした。

まるで鈴が鳴ったような、凛とした声だった。


「…黄瀬。」

「黒子っち…青峰っち…緑間っちも…。」


見慣れた黄色い髪がはかなげに揺れていた。


「っ…やっぱ…ダメっスわ…。」


彼女がいるそれに目をやると、眉を歪め、唇を噛んで、必死に涙をこらえていた。




「泣くな、涼太。」

「!赤司っち…!?」


泣きそうになった黄瀬君に渇を入れたのは、赤司君だった。


「紫原もか…。」

「うんー。」


でもやっぱり2人とも、悲しそうな顔をしていた。


「…赤司君。」

「なんだ?テツヤ。」

「…泣いても、いいですか。」


我慢が出来なかった。


「…泣かないと、決めたはずだ。」

「せめて、名前さんの前では、自分に正直でいたいんです。」

「…みんなは…?」


赤司君がそう言って皆のほうを見る。

皆はすでに、目に涙が溜まっていた。


もちろん、赤司君も。


「…泣きましょうよ。……彼女、いつも言ってたじゃないですか。」



『自分に正直でいてね。』



『じゃないと、人ってね、壊れちゃうから。』



『笑いたいときは思い切り笑って、泣きたいときは思い切り泣いて、
 怒りたいときは思い切り怒って、辛いときは思い切り辛いって思えばいい。』



『その時、私でよければいつでもいるから。』



そういって、彼女は微笑んでいた。


あまりにも綺麗で、儚い笑顔で、


いつでも僕たちを癒してくれた。



  

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