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□泣かないで
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バスケ部マネージャー、そして、俺の彼女の名前が、学校の帰り事故にあった。



ピッピッピッ……

病室に響き続ける電子音は、リズムよく、ずっと続いていた。


ついさっきまで練習を見てて、途中まで一緒に帰って、


『大我。また明日。』

そう言って別れたばかりだったのに。


嫌な予感はしていたんだ。




『大…我……。』



俺の名前を呼ぶ声がした。
驚いて顔を上げると、そこには、
うっすらと目を開けて微笑んでいる名前がいた。

「名前!」

俺は名前に駆け寄った。





『大我…なんで…泣いてるの?』




「あ…?」


自分の頬に手をやると、確かに濡れていた。


『もう…。泣き虫だね…。』

「…っうるせぇ…。」


すると、名前の血の気のない手が俺の頬を包んだ。






『泣かないで。大我には、笑ってる顔の方が、ずっと似あうよ。
だから…







泣かないで……。』



最後の力を振り絞って言ったかのように、名前の手はスルリと落ちた。


その瞬間、




ピ―――――…

という、耳鳴りのような電子音が響いた。


「っ…!名前!!!起きろ!おい!起きろよ!!」



また明日って、言ったじゃねぇか。



明日、学校でまた、「おはよう」って、言ってくれるんじゃねぇのか。


「ナイス!」って、誉めてくれたり、「ドンマイ!大丈夫だよ。」って、はげましてくれるんじゃねぇのか。





「大我、好きだよ」って、



言ってくれるんじゃねぇのかよ……!!!







「名前…。」




まだ、俺はお前に、何も伝えられていないんだ。






ポツ…

握りしめた拳の上に、涙が一粒、また一粒とこぼれおちて行く。


あぁ、「泣かないで」って、言われたっけか。



分かった。


もう、泣かないから。


でも、今は――――



これから、もう泣かなくてもいいように、目一杯、泣かせてくれ。



「っ…ぁああぁ…!!!っ…くっ…あぁぁ…!!」







ありがとうな。


一緒に過ごせて、本当に良かった。


もう、泣かない。




約束な。



 


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